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下戸は荷物


「はーい、先輩、おやすみー!」

また一人寝に入ったのを笑顔で見送った。
マネージャーは強制ではないけれど、一年男子は強制参加らしい。唐沢くんみたいな下戸に強制したって楽しくないだろうに。風習とは謎だ。
唐沢くんは壁に体を預けて寝ている。私が目を離した隙にビール2杯飲まされていたらしい。まだ吐いてはいないが、これまで何度か飲みに参加した経験から推測するとまだ怪しい。

「みょうじ、強いねー。こっちで飲も?」
「いやー、左右潰れてて身動き出来ないんで、先輩来て下さいよー」

片方潰したのは私だけどな。
先輩はやれやれと笑って、飲んでいたビール片手に目の前に座った。

「帰りが思いやられるな」
「ほんとですよねー」

美味しく飲んで、楽しく酔えて、問題なく家に帰れる。これが最高だ。泥酔の対処は余計でしかない。それでも泥酔する奴、させる奴がいるんだから全く嫌になる。
この先輩とは結局お開きになるまで一緒に楽しく飲んだ。
がぶがぶ飲んだ気がするのに、やっぱり酔った気がしないんだから、我ながら本当にアルコールに強い。

「じゃあお疲れー」
「お疲れさまでした」

今日も唐沢くんに肩を貸しつつ家まで運ぶ。
最近はこの酔っ払いの後始末は私の任務だ。皆から押し付けられる。めんどくさいっていうのが主な理由だろう。実際めんどくさい。

「よーし、家まで歩くぞー」
「無理」

部活のハードな練習でも一切弱音を吐かないくせに、酒だけはこれだ。

「タクシー呼ぶか?」
「いやだ」
「じゃあここに置いてくぞ」
「泊めて」
「えーまたかよー」
「泊まる」

唐沢くんの家は大学に近い分駅からは少し遠い。
仕方ないので私の家に持ち帰って、ベッドに放り投げれば即刻寝息が聞こえた。
唐沢くん…君は私の荷物か何かか。

大体私の家で寝るような酔いの時は、次の朝「何でみょうじさんの家で寝てるんだ?」とふざけんなレベルの言葉を吐くので、どうせタクシーで送ってやったところで忘れるのにわざわざ深夜料金のタクシー代なんか出したくない。
一応唐沢くんも申し訳なさはあるらしく、大体翌日の昼食をおごってくれるけれど、それでもタクシー代までは出したくない。割りに合わない。
唐沢くんに適当にタオルケットをかけて、私は床で雑魚寝。
同い年の同期生のはずなのに、段々弟に見えてきているのは、内心に留めておこう。
呑気な寝息を聞きながら、私も、明日はどこの学食で何おごってもらおうか考えながら、ゆっくり眠りについた。


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