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うわばみと降雪予報

大学にレポートを提出しに行った帰り道、部活の先輩に会った。
先日の送別会の一件もあったしなー、と思わず身構えたが、彼の用件はそれ関係ではなかった。

「今晩飲まねぇ?」
「おー!飲みたいです!けど、今夜雪降るんですよね?」

天気予報では夜から大雪だと言っていたので、あんまりに酷い降雪だとオールして帰るというのは酷だ。
酒は嬉しいけど、この間のことで酒飲みたい気分がいつもより減っているのもあって、天候の方が気になった。

「雪が積もるまでに帰れば大丈夫だろ」
「それもそうですよね…!」

ということで、参加表明してうきうきして帰れば、怪訝そうな顔をした唐沢くんが待ち構えていた。

「今夜宅飲み?」
「そう、先輩のとこ!唐沢くんも行くか?」
「行かないけど…これから雪降るのに?」

去年もなかなか積もったので分かるが、土地柄のせいで雪が積もりやすいらしい。都心で大雪だと言われているんだから、ここだと相当積もりそうだ。
同じことを考えていたらしい唐沢くんは、雪が降る前にスーパーで買い物をしておきたかったついでにうちにいるのだろう。玄関に買い物袋が置いてあった。

「雪降るまでには帰るって」
「行かない方がいいと思うけど…」

渋る唐沢くんに、そんなに言うんだったらと、冗談半分に「雪降ったら迎えに来て!」と言ったら心底呆れられた。



夕方唐沢くんと一緒に家を出た。場所は大学近くの先輩の家で、また大学まで歩くのかと思うとめんどくさい。いや、酒のためだ、頑張れ私!
空はもう曇っていて、いつ雪が降りだしてもおかしくない雰囲気だ。

「雪降る前に帰ること。いいね?」
「大丈夫だって。すぐには積もんないって」

私が軽く笑っているのに対して、唐沢くんは雪が降り出したら坂道は足元気をつけろとか、歩いて帰れそうになかったらうちに来いとか、いろいろ言っていた。そんな過保護な唐沢くんと大学近くで別れて、しばらく歩いて先輩の家に着いた。

「どもー」
「おー、いらっしゃい」
「あれ…?まだ他の人来てないんですか?」

人の少なさに、先輩が「遅れてくるって」と苦笑していた。それなら仕方ない。
唐沢くんが口うるさく言ってたし、ふらつく足だと雪降ったら危ないし、先に飲みはじめて、適当なところで帰ろう。



それから、適度に酒を飲んでいたはずなのに、さっぱり記憶がなかった。


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