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うわばみと居候

冬休みも過ぎて授業が再開して以降、ほぼ唐沢くんがうちにいて、最早自分の家は寝に帰る場所状態だ。

「出来たよ」
「おー!家帰れ!」
「嫌だ」

毎日こんな感じである。
本人曰く「みょうじが一人暮らし始めたら、またコンビニ飯になりそうだから特訓」らしいが、今日なんか私、すき焼きに使う卵を冷蔵庫から出しただけだからな。特訓って何だ?冷蔵庫から物を出すことか?日常生活の動作にも訓練が必要だと思われるレベルなのか?

「大体問題の彼女とはどうしたんだよ?ヤったとか言われて渋々付き合ってんのに放置とか、レイプされたって警察に突き出されたらどうすんだよ?」
「日中それなりに相手はしてるし、夜はバイトしてるってことにしてる」
「ふーん…まあ、飯作るバイトと言えなくもないけど…」

でもいつかバレるんじゃないか?後つけられたりとかして。
思っていたことが顔に出ていたらしく、唐沢くんが苦笑する。

「ストーキングはたまにされるけど、適当に撒いてるよ」
「えー…うちに持ってくるのだけはやめろよな…。カーテンの隙間から覗かれてるとか、そういうの絶対嫌だから」

考えただけでもゾッとして思わず窓を見た。大丈夫、カーテンに隙間はない。

「…もしかしてみょうじ、怖いもの嫌い?」
「…怖くないし。全く全然怖くないし」

卵の中の豆腐に目を落とす。
美味しい。豆腐美味しい。しらたきも豚肉も美味しい。すき焼き美味しい。

「そうか。…話戻すけど、一応いろいろ調べたりとかはしてるんだ」

探偵紛いな活動報告を、目をギラギラさせて話す唐沢くんにちょっと肝が冷えた。
敵に回したらいけない人だ、この人…。一体どんなコネを持ってるんだ…。

「唐沢くん、探偵にでもなる気かい?…ラグビーやってるから探偵にもなれるのかもしれないけど…」
「…ラグビー関係ある?」

あるよ!僅かな隙間を見つけて体をねじ込んでいくところと、小さな手がかりを見逃さないところ!似てる!関係ある!と力説したものの、唐沢くんは首を傾げただけだった。


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