04号室の場合
5月にもなると、夜明けはだんだんと早まってくる。
俺が起床するのはだいたい4時。
本当ならこんな早起きをしなくてもよいのだが、困った上司の我が儘で俺はこんな時間帯に起きている。
(しかし、それももう慣れた)
さて、今日も目覚ましのなる前に布団から起き出した俺は、スウェットを脱ぎ捨て、顔を洗い髭をそり、シャツとジーンズへと着替えた。
冷蔵庫から牛乳を取り出して、そのまま口をつける。
上司は朝から珈琲を飲むらしいが、俺は無理だ。
常日頃から胃を痛めて仕事に励んでいるというのに、なんで朝からあんな刺激物を摂取しなけりゃならない。
牛乳を冷蔵庫にしまうと、ジャケットを羽織ってバイクのキーを取り出す。
ポケットに煙草があるかを確認して、俺は扉を開けた。
外にでると、体がブルリと震えた。
やはり、5月といえど明け方は寒い。
俺は玄関前に停めてあったバイクにまたがると、朝焼けの中を走りだした。
「はよーございます」
「おはよう」
職場には30分ほどで着く。
いつもの事だが、そこには秘書の彼女が既に出勤していた。
「リザさんいつも早いっすね」
「ええ、人間慣れたら早起きなんて楽にできるものよ」
「そうなんスよね、俺も慣れちゃいました」
「うちの上司にも困ったものだわ」
クスクスと上品に笑う彼女。
しかし、俺はしっかりと時間外手当を彼女が上司に要求しているところを見てしまっていた。(日本には銃刀法があった気がするのだが……アレは目の錯覚だったのだろうか)
「ハボック君、そろそろお迎えにあがるから着替えてらっしゃい」
「イエスマム」
ピッと額に手をあてて、踵をかえす。
自分のロッカーから取り出すのは、本来の自分の制服。
俺はそれに着替え、帽子をかぶり、白い手袋を嵌めると、バイクのキーからリムジンのキーへと持ち替えて車庫へと向かった。
「さて、今日もお迎えにあがりますか」
「いつもの通り、あの角でおろしてね、あとは歩いてお迎えにあがるから」
「イエスマム」
04号室のハボックさん。
毎朝早起き、出勤は5時。
バイクで颯爽と職場へ向かいます。
でも、職場につくと、あら不思議。
ハボックさんはお抱え運転手さんに早変わり。
さあ、今日も上司を迎えに参りましょう。