03号室の場合
私の朝は管理人さんの怒鳴り声と他の住人さんの笑い声で始まります。
おふとんの中でその声に耳をすませるのが、私のひそかな楽しみだったり(デバガメじゃありませんよ!)
毎日毎日、01号室のマスタングさんを起こしに行くエドワード君。
マスタングさんの前ではあんなことを言っていますが、満更ではないようです。
だって、本当にどうでもいい人なんて毎朝わざわざ起こさないでしょう?
そして、そんなエドワード君をみるマスタングさんの表情のなんと柔らかいこと!!
雑誌でおみかけするお顔も、爽やかで好青年な若手実業家って感じがしますが、それとは別格な疼けるような笑顔って、ああいうものを言うんですよね。
でも、このオンボロ荘(ああ!!オンボロだなんて!エドワード君ごめんなさい!)に彼が住んでいるとわかった時は、本当に驚きました。
だって、まさか今話題のマスタングコーポレーションの社長様が……ねぇ?
家賃2万、風呂なし、トイレ共同、クーラーもないし壁は薄い、のこのオンボロ荘(ああまた!!)に引っ越してこられるなんて誰が考えられます?
私みたいにお給料の殆どを本に注ぎ込んでじり貧生活ならまだ分かりますけど……
これは一概に愛の力なのかしら?
さて、そろそろ窓から程よい陽射しが差し込んできたし、起きてお仕事にいこうかな?
でも、寝たのがお隣りさんがお仕事に行かれる時だったし(04号室の人は5時には出勤しちゃうんですよ!何のお仕事なのかしら)、まだ3時間しか寝てないし……
昨日読んだ、夏目漱石全集がいけなかったんだわ!!
すっかりハマッてしまって、気付いたら夜が明けてしまっていたもの。
うん、でも起きないとね。
早く出勤しないと、またヒューズさんに怒られてしまう。
それに、早く開館してあげないとエドワード君が拗ねちゃいそうだし。
ああ!司書さんってもっと本が読めるお仕事だと思ってたのに!!!
まあ、いいわ。
さあ起きましょう!!!
えっと眼鏡、めが……ね…?
「キャーー!!!!」
「!シェスカ!!どうした!!!」
「ああ!!兄さん!またシェスカさん本に埋まってるよ!!!」
「またー?!!!」
「た…たす……けてぇ」
03号室のシェスカさん。
街の図書館のちょっとおとぼけ司書さんです。
最近の気になることは、お隣りさんのお仕事と、他の住民さんの恋路だったり。