02号室の場合
僕の朝は早い。
5時には起きて、兄さんと僕の朝食を作る。
作り終わったら、だいたい6時。
管理人室の兄さんを起こしにいく。
その際、01号室の前を通りすぎるのだけれど、いつも高級豆であろう珈琲の香と、駅前のパン屋【エリシア】のブレッド(これが大人気で開店10分でなくなってしまうのだ)が香ばしくトーストされる匂いがする。
なぜ、そんな朝食からしてエリートですと言わんばかりの人がこのオンボロ荘にいるのか不思議ではあるが、そこはプライバシーの問題。
僕が踏み入っていい領域ではない。
管理人室の扉を開けると(鍵をかけろって昨日も言ったのに兄さんったら!!)、畳の上に大の字で寝転がっている兄さんがいる。
ああもう!!
またお腹出して寝てるよ!!
目覚ましなんて無駄な物はこの部屋にはない。
買っても買っても使い捨てになるのだ。
毎朝壊されたら堪らない。
「んんー」
ああ、もう。
気持ち良さそうに寝ちゃって。
でもそろそろ起きてよ兄さん。
7時。
やっと起きた兄さんは、顔を洗って、寝癖を適当になおす。
朝ご飯を僕の部屋(02号室だ)で食べ終えると、スウェットのまま玄関のお掃除。
おおあくびをしながら僕の横を通り過ぎた兄さん。
そして、小さな違和感。
「兄さん、5月なのにもう虫刺され?」
「ええ?どこ?」
「ほら、首筋」
「んん?でも痒くねぇからいいんじゃね?」
そんなものかな?
ってそんな訳無いじゃないか。
だから鍵をかけろって言ったのに!!
どう考えてもアレって。
02号室のアルフォンス君。
しっかりもののお兄さんっ子。
なにやらお兄さんに悪い虫がついてるようで、ちょっぴり心配しているようです。