訪問


何故か大輝とグランドフォールに行くことになった私。
その日は夕方だったから、さつきの宿に泊めてもらうことになった。



「あ〜、気持ちよかった〜」



ガチャリ、と脱衣場のドアを開ける。
すっかり日もくれ、窓の外からはやわらかな街灯の光が差し込んでいる。
私が泊まっている部屋も、白と青で統一されていた。

濡れた神をタオルでふく。そういえばシャワー室も白と青だったな。

明日はいよいよグランドフォール。目的の国宝奪還に1歩近づくわけだが、私でグランドフォールを攻略できるだろうか。
そりゃあ、今までかなりの修行を積んだつもりだし、愛用のレイピア【プリンセスムーン】もかなりのレアアイテムだ。
しかも国一番の剣士の大輝も動向してくれるのだ。さっきさつきに聞いたところどうやら本当らしいし。



「……うん」



頑張ろう、と机においていた愛用のレイピアを眺めてそうつぶやくと、コンコン、とノックが聞こえてきた。



「どうぞ」



私がそういうと、ガチャリとドアが開いた。さつきだろう、そうおもったが、部屋にかがんではいったあたり、さつきではなく、



「よう、名前」

「大輝、どうしたの?」



やはり大輝だった。さっきまでの武装姿じゃなく、大輝はラフなジャージ姿だった。
大輝は入って早々ベッドにどかっと腰をおろす。



「ああ、ちょっと明日について話があってな」

「そう」



大輝は机の上に置いていた私のレイピアをしばらくじぃーっとみた。そういえばさっき思ったが、大輝の武器はどうやらロング・ソードらしい。さっき背中に装備してあったのを見た。
ロング・ソードは中々扱いが難しく、手練れが使う武器らしい。どうやら大輝は相当な手練れだ。



「お前の武器、レイピアなのな」

「うん。軽くて使いやすいの。大輝はロング・ソードよね?」

「?なんでしってんだ?」

「さっき装備してたのを見たの」

「そうか。俺にはあれが一番だ」



そういって大輝はニカっと笑う。
私も少し微笑んだ。



「で、話なんだが、」

「ああ、何?」

「グランドフォールは一度ガキのころに行ったことがあるんだ。まぁ、ガキだったし、攻略はむりだったけどな」

「え?確か大輝の出身ってブルー王国じゃ?」

「さつきがサファイア好き好き行ってたし、ブルー王国からもちけぇからよく来てたんだ。」

「へぇ〜」



本当にさつきと大輝は仲が良い、そう思った。
自分はずっと修行づめの毎日だったし、従者と二人暮らしだったから幼馴染みと呼べる人がいなかった。幼きころに幼馴染みはいたものの、国と一緒に……



「でだな、確かグランドフォールは地下5フロアまであるんだ。ダンジョンだな。」

「5フロアも…」

「そして1フロアごとに敵も強くなってくる。俺が行ったのは2フロアまでだ」

「え、ちょっとまって、グランドフォールに行った人で帰ってきたものはいないって」

「俺がはじめてだなーそういえば」

「…矛盾してるんだけど」

「んなこたぁきにすんなよ」



ふんっと大輝は鼻で笑うと、はぁ、とため息をつく。



「今の俺ならお前を守りながらいける、なんて思って、それをいいに来たんだが、そのしつようはないみたいだな」

「ええ。自分でたたかえるわ」

「そうか。というかお前が姫とか本当焦ったわ」

「…そう」

「さすがさつきだな」

「……さつきって、」



一体何者なの?と聞けば大輝はああ、と言葉をもらす。



「さつきは、情報屋なんだ」

「…え?」

「宿屋がメインだが、情報屋もやってる。だから人を見る目もあるし、色んな情報を知ってる。」

「へぇ…って、私情報聞いちゃったんだけど、大丈夫なの!?」

「金を要求しないってことは大丈夫なんじゃね?」



そういうと大輝はベッドからおり、ドアをガチャリと開けた。



「っーわけで、また明日な」

「うん。明日はよろしく」

「おう」



バタンとドアがしまる。
私はしばらくしまったドアを見つめていた。





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