ルシェは最近ポストによく目を寄せている。それにフィディオが気づいたのはミ
スターKが亡くなってから、しばらくしての事だった。

「ルシェ、何か待ってるのか?」
「うん、おじさんからの手紙を待ってるの。」

そう言って無垢な笑顔を見せるルシェにフィディオはあの時の、ミスターKが亡く
なった時の鈍く、それでいて痛烈な痛みを思い出してしまう。目の前の少女はな
にも知らない、教えていない。そうしたのは紛れもない自分達なのだ。

「わたしね、おじさんへ手紙を出したの。おじさんのおかげで目が見えるように
なって嬉しいとか、サッカーの勉強をするとか、またおじさんに会いたいって、
たくさん書いたの。」
「……そうなんだ、あの人はルシェにまた手紙を送ってくれるよ。」

本当はもう居ない、ミスターKは死んでいるんだと言えたのならどれ程楽なのだろ
う。でも、ルシェはミスターKが自分にまた手紙を送ってくれると信じているから
。だから、フィディオは本当のことが言えない。


もう、あの日出した手紙の返信は返ってこないという現実を。



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「見えない臓器の名前は」
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