第一話「しゅじょぉ」「主上」 「しゅじょー」 「しゅ、じょ、う。」 「……しゅじょお」 「……」 サクラの女怪――揚燈が何とか主上という言葉を覚えさせようとしている。 それまで楽しげにガウルの尻尾で遊んでいたサクラは ぷくぅと頬を膨らませてそっぽを向いた。 「諦めろって……。」 ガウルが主と同じように頬をぷくぅとさせた揚燈に苦笑いしながら サクラを抱き上げる。 「しかし……。」 「こいつがこの姿のときに期待すんのは無理だろ」 サクラはぱたぱたと足をばたつかせる。 ガウルは自分に抱かれてもなお、 幼女の姿で遊んでいる麒麟を見下ろして深いため息を吐いた。 (2/10) 前へ* 目次 #次へ栞を挟む |