どこかの世界線、良い子の話
"天音は良い子だから"
"天音は自慢の良い子"
"ひとりで良い子にできるでしょう?"
良い子って、何……??
寂しいときに寂しいって言えなくて、辛いときに辛いって言えなくて、好きでもないピアノをずっと弾き続けて、どんなに頑張っても、もっともっとって満足に褒められたこともなくて、クリスマスやイベントは演奏会をしてにこにこして、誕生日なんか忘れられてて、聞き分け良くしてたら良い子?? その、貴方達の自慢の良い子って、それ、僕である必要、ある?
"ねえ、誰か、俺を知ってよ"
なんて、とても言えなくて。心の中で呼んでた声が、願いが、叶ったのかと思ってた。
でも、結局、ねえ。俺は、何か失敗したんだね。やっぱり"良い子"じゃない俺は、必要なかったんだな。良い子の僕は、お前にあんな顔はさせなかったんだろうな。
でもね、龍宝。
俺ね、楽しかったよ。あんな風にしかできなかったけど。ほんとは、お前が来てくれたこと、嬉しかったんだ。
だから、最後に。
「は?! ふざけんなよ、やめろよ、俺は、死にたくなんかないよ! お前なんかに……お前なんかに好き勝手に……!!」
少しの衝撃と、薄れる意識。
ごめんね、この身体と能力をお前にあげることが、きっと、俺にできる最高の恩返しだから。
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