The infinite world | ナノ



手代木 晴臣の話


 またか、とぼんやりする意識を覚醒させる。
 明らかに、自分が自分でないような、そんな感覚。
 それでも、もうどうでもいいかなって、思っていたんだ。
 目覚めた意識の中でもうどこにもいない気配を探すのも、自らの意識を保とうとするのも、もう疲れてしまったから。
 あげるよ、と。ぼんやり思う。
 この身体が必要なら、もう好きに使っていいよ、と。

 「……ほんとに?」

 ヒヤリと冷えたようなその音も、もう確かな言葉として耳には届かないのだから。

 end.

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