Clap



「おもしろかったぁ……!」
「ですねぇ」
上映が終わり、明るくなった映画館。隣に座る八戒に思わず興奮気味に話しかけてしまった。
久々の休み。私が見たがっていた映画に付き合ってもらうことにした。上映中はもちろん映画に集中していたけれど、肘掛に置いた指先がくすぐったいくらいに触れ合ったり、私の手を、八戒の大きな手が包み込んでくれたり。エンドロールの時に盗み見た、真剣にスクリーンを見つめる横顔と眼差しに、私の心臓は簡単に鼓動を早めるのだった。

「八戒……」
うっとりと彼を見上げると、穏やかな微笑みが返ってくる。
それにしても。
「……あのキャラ、本当にかっこよかったぁぁ!!」
「……え?」
八戒の微笑みが引き攣り、固まったことに全く気づかず、私はキャラへの愛を興奮気味で語り始めた。
「普段は物腰柔らかそうな態度なのに、あんなに無茶なカーチェイスこなしちゃうところとか、たまんないよね。時折見え隠れするワイルドさ、でもやっぱり結局優しい人なんだ〜ってわかるところとか、もう最高……あっ……」
禍々しく黒いオーラに包まれていることにようやく気付いた。なんだろう、八戒の"気"のせいで、空気が酷く思い。
「あ、あの、ごめん、一方的に話しちゃった……」
「いいんですよ、貴女の好みを知ることができました」
「えっ」
「運転中は舌を噛むと危ないので、静かにしていてくださいね」
語尾にハートマークが付きそうなほど、甘い口調だったが、半ば強引に手を引かれ、車に乗せられた。

やはりジープを乗りこなす彼のドライビングテクニックは凄まじいものだった。
車で揺られ続け、ぐったりとした体をシートに預ける。
見上げた先に、整った顔が降りてきて、ゆっくりと唇を奪われる。
ドライブデートと言う名の、映画顔負けのカーチェイスを繰り広げたあとは、びっくりするくらい甘く優しい夜が待っていた。





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