拍手御礼「ワートリ夢主お誕生日」
<5:00AM@家>
朝起きて携帯を確認すると、いつもは来ていても数件のメールが、十数通届いてる。
その全てが同じ内容のもので、すべてに目を通してほっこり気持ちが暖かくなる。
返信は後にしてリビングに向かい、いつも通り朝食の準備をする。
ガチャリ。
開いた扉を見やると、眠そうな顔をした義父の起床。
「おはよう、義父さん」
「あぁ、おはよう。それと、」
「ん?」
「 」
「ふふ、ありがとう」
「わたしと沢村くんからだ。帰ってから開けると良い」
「わーい!ありがとう!」
可愛らしい包装のされた、小さな小箱。中身がなんなのか、帰ってくるまでのお楽しみだ。
<8:15AM@校門>
ポン。
校門をくぐったところで、肩に何かが乗っかった感触。反射でそのまま振り返ると、ぷに。
「…………とうまさん」
「ふはは、古い手にひっかかるな、お前」
「じみにいたいです」
「お前ぷにっぷにだなー」
「おんなのこにいうことじゃないです。ていうかいいかげんはなしてください」
「もうちょい堪能させろよーなんだこれ餅みてぇ」
ぐにぐに。
「ひょうまひゃん、いたいれふ」
「はは、ぶっさいくー」
「だえのへいれふか」
「たてたて、よこよこ、まるかいてちょんっ」
「………私のほっぺはおもちゃじゃないですよ…ていうか当真さん、意外とかわいいことするんですね」
「俺はいつでも子ども心にあふれてるぞ。ん、ほらよ」
「わ…」
渡されたのは腕に抱え切れるほどの大きさの布袋。両手に抱えて持ってもそれほど重くない。
「冬島隊からですよー。選んだのは真木だけどな」
「ありがとうございます…後で開けますね」
「おう。じゃぁな、今日の主役」
「はーい」
「あ、忘れてた」
「…?」
「 」
「!ありがとうございます」
「じゃあなー」
<8:30AM@教室前の廊下>
「「おはよーす!!」」
ガッ(Wラリアット※ソフトに)
軽くではあったが、両肩に衝撃が走った。今度はなんだ、と思う暇もなく。
「っ?!う、わっと…何…、よう、すけ?公平?」
「おう、おはよ」
「お、はよう…2人が朝に揃ってるのって珍しいね」
「だろー?校門前で会うの珍しいなって話してたんだよー」
「そしたらお前見つけるじゃん?派手に挨拶してやらなきゃって思うじゃん?」
「いや、普通で良かったけど…むしろ普通が良かったけど…」
「「遠慮すんなってー」」
「いや、遠慮はしてない…」
「ってわけで、ほれ」
「ちゃんと分けたんだぞ、俺ら」
分けたと言いつつ、贈る物が同じなあたりこの2人は思考がよく似てる。
「…ありがとう」
「なんだよー辛気臭い顔で言うなよー」
「もっと嬉しそうに!」
「……今日テンション高いね、2人とも」
「お前がテンション低いから俺たちが勝手に盛り上がるしかないだろ」
「だからほら、俺たちが痛い人だと思われたくないならお前もテンション上げろ」
「いえ、道連れはごめんです」
「「おい!」」
「ふふ、今日はやけに息が合うね」
「「!いや別に……、?!お前…」」
「ははっ、何それ打ち合わせでもしてるの?」
「「………………」」
「?…何?」
「まぁ、あれだ。お前のその顔見れたんなら」
「こいつとハモるくらい安いもんかな、と」
「?なにが…」
「米屋、」
「ん?あー、いいぜ、せーの」
「「 」」
「へへ、ありがとう」
<4:30PM@ボーダー本部基地>
「あ、いた。おーい」
「?」
ラウンジで様々な人からお祝いの言葉をもらって談笑していたら、遠くから自分を呼ぶ声が聞こえる。しかしきょろきょろ周りを見ても姿が見えない。
「うーえ!上だ!」
「上…?あ、慶兄!」
「お前ちょっとそこで待ってろ」
「あ、うん…」
「任務前に会えて良かった。どうせなら今日渡したいしな。ほれ、国近と一緒に選んだ」
「ありがとう〜なんだろ、帰ってから開けるね」
「おう」
「今日任務なんだ。一緒にご飯食べられる?」
「ん。忍田さんに22時上がりにしてもらったから、帰りに寄る。って言ってもお前が飲めない酒を飲みに行くんだけどな」
「それでもいいよーじゃあご飯そのつもりで作るね」
「おう。あ、 」
「はーい、ありがとう。任務頑張って〜」
「後でなー」
<7:30PM@家>
「ただいま〜。ふう、たくさんもらっちゃった…」
抱えるのが困難な程の大荷物をなんとか部屋まで運び、ベッドの上にそっと置く。
大きなものから小さなものまであるが、それらは全部軽いものだから、それほど重くはなかったがかさばると運ぶのは困難になるんだな、と一つ学べた気がする。
「ありがたいなー、こんなにたくさんの人からお祝いしてもらえるなんて」
ひとつひとつの贈り物を丁寧に包装を解いていく。
義父、忍田とその補佐官沢村からは、
「わぁ、可愛い!沢村さんが選んだのかな?」
シンプルなデザインの腕時計。
大切にしていたものが壊れたので新しい物が欲しいと思っていたところだ。忍田が知っていたのだろうか。
さっそく身につけ、次の包装を開ける。
冬島隊からは、
「おお、さすが真木さん。センスが良い…」
入っていたのはペンケースとその中にペンが数本にレターセット。
どれもオシャレですぐにでも使いたくなるものだ。
鞄から今日まで使っていたペンケースを取り出して、必要最低限のシャーペンや色ペンを新しいペンケースに入れてみる。
「勉強頑張る気になるね。さすが真木さん、ふふ」
お礼の手紙をもらったレターセットで書くというのも良いだろう。
出水と米屋からは、包装されてなかったので渡された時からなんなのかわかっていたが、いざ並べてみると。
「私ってそんなに栗が好きだと思われてるのかな…。いや、確かに好きだけど」
栗のお菓子がそれぞれ2つ。
お菓子というジャンルが被ったとして、味まで被るということは彼らの頭の中ではそれほど彼女=栗というイメージなのだろう。
「慶兄からは、なんだろ…?何これ」
出てきたのはカードゲーム、のようなもの。
「裏トランプ…柚宇ちゃんが選んだのかな。今度太刀川隊誘ってやろう、うん」
その他にも、映画のDVDや前から欲しかった小説3巻セットにお菓子の詰め合わせ、今日誕生日だと知らなかった人から奢ってもらったジュースやお菓子がわらわら出てくる。
何年もボーダーに所属していて、しかも知り合いが年上の方が多かったりするとこうして可愛がってもらえるのが嬉しく、またちょっぴりこそばゆい。
並べたプレゼントが全部写るようにベッドの上で整えると携帯を取り出してカメラを起動。
真ん中の白い丸を押そうとしたところで、手に持っていた携帯がぶるぶると震えた。
「わっ、と危ない…」
危うく取り落とすところだった。
急に震えた携帯の画面を見ると。
「あ…」
そこには見慣れた、名前が。
<7:45PM@エントランス前>
「も、しもし…」
『もしもーし、今平気?』
「あ、うん。大丈夫だよ」
『じゃあちょっと降りてきてもらってもいいか?下にいるから』
「わ、かった…すぐ行く!」
「よ。遅くにごめんな」
「ううん、大丈夫。さっき帰ってきたばかりだし」
「そっか。まあ、用件はわかってると思うんだけど」
「うん…」
「これ、うちのボスを始めとする、玉狛支部の皆から」
「わ…!すごい、ありがとう…」
渡されたのは、小ぶりな花束。赤、白、黄色、オレンジ、ピンクと様々な色が混じったとてもカラフルな可愛らしいものだ。
選んだのは宇佐美と小南だろうか。
買ってきたのは烏丸かもしれない。
「レイジさんからは毎年恒例の、手作りケーキ」
「だよね、待ってました〜」
「お前の好きな栗のタルトにしたってさ」
「嬉しい。後でお礼言わないと…」
「で、これは俺から」
「えっ!迅、さんから…?」
「うん。今年は皆とは分けてみました」
「………」
「ん?…どうした?」
「ううん…、ありがとう」
素直に、嬉しかった。
こうして、プレゼントを渡しに来てくれたことも勿論だが、こうして祝いの気持ちを形として渡されると、嬉しいものだ。
「なんだろ、開けていい?」
「どうぞ」
「…!箱…?いや、オルゴールかな?」
「そう。開けてみて」
〜♪〜〜♪
「!!これ…!」
「好きだったろ?」
流れたのは懐かしい曲。空で歌えるほど覚えた曲だ。今でも勿論好きな曲。けれど…
「この曲のオルゴールなんて、売ってないでしょ…?どうやって…」
「ん、まあちょっとね」
「………」
「………あー、気に入らなかったか?」
「ううん!とんでもない!ありがとう…とても嬉しい」
嬉しい。嬉しくないはずがないのだ。
「大切にするね」
「ん、ありがとう」
「こっちのセリフだよ」
「喜んでもらえたなら手間をかけた甲斐があったよ」
「うん…」
「じゃあ、俺そろそろ行くね。実は任務の途中で来たんだよね」
「えっ?!大丈夫…?」
「バレなきゃだいじょーぶだいじょーぶ」
「気をつけてね。わざわざありがとう」
「ん。じゃあ…、あ。」
「?」
「これ言わなきゃだよな。
誕生日、おめでとう」
「…うん。ありがとう」
たくさんの、おめでとうを、きみに。
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