番外 喪服のこども
狼さんは言いました。そんなに真っ赤な服を着ているから余計人の目を惹き付けるんだ、食べられたくないのなら真っ黒な服を着て皆が寝静まる夜の下で生活すれば良い。それを聞いた女の子は瞳を輝かせて狼さんと握手を交わし、嬉々として自分が着ていた真っ赤な服を脱ぎ捨てました。眩しい夕陽を背に真っ黒な服に着替えて、狼さんにお礼を言った後お家に一度戻ります。狼さんから聞いたことはお母さんにも教えてあげた方がお母さんの役に立つかもしれないと思ったのです。
木で出来たドアを三回叩くと中からお母さんの姿が現れました。せっかちな女の子はお家に入る前に意気揚々と狼さんに聞いたことをお母さんに話しました。しかしお母さんは困ったような顔をして、ドアをぴしゃりと閉めてしまいました。ドアの外に立ったまま女の子も困りました。ドアをもう一度叩いても、大声で叫んでもお母さんは現れません。それもそのはず、上から下まで真っ黒な女の子は夕闇に溶け込んでしまっていて、お母さんの目にはもう映らなかったのです。
真っ黒な服を着た女の子は二度とお母さんやおばあさんに会えないまま一人で静かに暮らしました。