お嫁においでよ! | ナノ

水色様相互リク
臨静で学パロ





お嫁においでよ!




「なぁ新羅…お前、進路用紙出したのか?」
「んー?そんなのとっくに提出したよ」


屋上のベンチで仲良く(?)弁当を食べていた静雄と新羅。
もくもくと唐揚げを咀嚼しながら静雄がそんな質問をする。


「その様子だと、静雄はまだなんだ?」
「ん…。新羅は進学すんのか?」
「え?しないよ」


小学生からの友達である新羅と静雄。中学は別だったがお互いの家に遊びに行くくらいの仲な為、お互い親の職業だって知っている。新羅の父親は医者で、新羅自身も幼い頃から英才教育を受けていると知った上での「進学するのか?」という質問だったのだが、その答えに静雄は「は?」と疑問の声を漏らす。

「お前、医者になるんじゃねーの?」
「なるよ?」
「じゃぁ、大学行かなきゃだろ?」
「えーやだなぁ、幼い頃から英才教育受けてたって言ったことあるだろう?今更一から勉強なんて時間とお金の無駄!
だから俺は闇医者として生計を立てるんだ。その方がセルティと過ごせる時間が増えるだろうし。
で、そういう静雄はどうするんだい?」
「俺……は、」


それきり、口に運ぼうとしていた出汁巻き卵を箸で掴んだまま固まる静雄に「あぁ、まだ決まってないんだね」と理解した新羅は見守るような眼差しで静雄自ら話しだすのを待った。


「玉子焼きもーらい!」
「あ」


そんなほのぼのしていた空間に突如降って来たイレギュラー。
静雄が箸で挟んだまま宙に浮かしていた良い焼き色の着いた美味しそうな出汁巻き卵がいきなり振って沸いた男に掠め取られる。
いきなりの事だったので若干間抜けな声を出してしまった静雄だが、見上げた先の人物の顔を見て眉間に深く深く皺を刻み込んで相手の名前を呼ぶ。


「臨也ぁ…手前…」
「いいじゃん。玉子焼き一つくらいでケチケチしないのぉー」


ニヤニヤ笑いながら間延びした声で返す臨也に腹が立ち、ついつい指先に力を入れてしまった為弁当箱にピシリと罅が入る。
「あぁ、ノミ蟲野郎の所為でまた弁当箱買い換えないといけねぇじゃねぇか…」と若干理不尽な事を考えながらふつふつと怒りを溜めている静雄を他所に、臨也は指で摘んだままだった出汁巻き卵をヒョイっと口の中に入れる。
その瞬間に口の中に広がる卵と出汁の絶妙なハーモニー。加えて出汁巻き卵とは思えないぐらいふわふわした柔らかく舌触りの良い触感に何時もの人を食った様な表情はなりを潜めて、純粋に驚いたと言う表情で臨也は呟いた。


「…凄い、美味しい…」
「…え、あ、あぁ…そう、か…?」


今、出汁巻き卵を味わう事に一生懸命になっている臨也は「美味しい」と呟いた事に静雄がどんな表情になったか一切気付かずモゴモゴと口を動かしている。知らず知らず昼飯代わりに食べていたゼリー飲料を持っていた左手に力を込めてしまい、中身が少しこぼれてしまった事に気付いた臨也が声を上げるとそれを見た静雄が眉を顰める。


「臨也…手前…昼飯それだけか…?」


よくテレビCMなんかで見掛ける忙しい人の為の20秒で栄養補給が出来るゼリー飲料。
臨時の手の中にあるソレを暫く睨むと、静雄がおもむろに弁当箱の蓋へおかずを取分け出した。その不可解な行動を疑問に思いながらも「シズちゃんって意外とお箸綺麗に持つよね…」なんて眺めていると数種類おかずの乗った蓋が臨也の目の前に突き出された。


「!…え…?」
「そんなんで足りる訳ねーだろ…
3食ちゃんと食わねーと駄目なんだよ馬鹿」


「箸はねーから手掴みで食え!」とそのまま蓋を押し付けられて呆然とするものの、臨也は新羅とは逆の静雄の隣にチョコンと腰を降ろすとモクモクと手渡されたソレを食べだした。


「凄い…本当美味しい。
この自然な色合いって、全部手作りだよね?冷凍食品使わずにこれだけ品数作るって凄く無い?」


大量生産される作られた味では無く、一品一品心を込めて作った手作りの温かい味に自然と微笑みを作る臨也に静雄はポリポリと頬をかきながら顔を逸らす。


「俺、一人だったら冷食でもいーけど、幽の分もあるから…だからちゃんとしたモン食わさねーと…って思ったら…それに出汁巻き以外は晩飯の残りだったりするから…そんな大変でもぇし…」
「そうなんだー…って、え?」


ふんふんと静雄の話を聞いていた臨也は「あれ?」と思い静雄の顔をポカンと見つめる。
静雄の話し振りだと、見事な色合いや栄養バランスを考慮された完璧と言っていいお弁当を作っているのは平和島家の母では無く…


「このお弁当、シズちゃんが作ってる…の…?」


自動喧嘩人形なんて呼ばれる、毎日の様に喧嘩を繰り返す色んな意味で不器用な男がこのお弁当を作ってる…?
混乱する臨也だが、静雄はごく普通にどうしてそんな事聞くんだ…?と酷く不思議そうな顔をして肯定の返事を返す。


「嘘…」
「嘘って何だよ…」
「静雄ん家って共働きで二人とも凄く忙しいもんね。だから家事はほとんど静雄がやってるんだっけ?」
「あぁ、父さんも母さんも仕事頑張ってるんだから、せめて家の中で俺が出来る事はやんねーとって…て、臨也?」


静雄の家庭事情を知っている新羅と話していると、臨也が俯いて肩を震わせているのに気付き静雄が声を掛ける。
その途端臨也は勢い良く顔を上げ、がしっと静雄を肩を掴んだ。


「シズちゃん!!!進路用紙まだ出して無いんだよね!?」
「は…?」
「何、臨也。実はそんな処から屋上に居たの?」
「もうシズちゃんは“永久就職”で決まりでしょ!!
第一希望は“折原臨也のお嫁さん”!!良かったね。これで進路希望用紙提出出来るよっ?」


やけに爽やかに微笑む臨也、良く解らない笑みを浮かべる新羅。
そんな二人に挟まれて、暫く臨也の言った事が理解出来なかった静雄はポケっとしていたが理解した途端臨也の手を振り払って立ち上がる。


「な…ば…、お、お、俺は男なんだから嫁になんてなれる筈ねーだろっっ!!!」
「突っ込む処は其処なんだね静雄」
「そんな細かいこと気にしないでいーじゃない。
シズちゃんの料理の腕前に惚れました。後、何気に箸の持ち方が綺麗な処も。毎朝俺の為に味噌汁を作ってくれないか…?」
「決め顔で言ってるけどプロポースが古い上にソレ最早ネタだよ臨也」




















その日から何時もとは逆に折原臨也に追い掛け回される平和島静雄が見かけられる様になったとか、静雄の字ではない字で第一希望しか書かれていない―しかも“折原臨也のお嫁さんv”と書かれた平和島静雄の進路希望用紙が提出されたとか何とか。





「シズちゃーん!!!エンゲージリング買ってきたんだけどー」
「うわぁあぁああぁあぁ!!近寄るな、死ね!!」
「ふふふ静雄ってば真っ赤になっちゃって…実は満更でも無いんじゃないのかな?」



【終】


















水色様へ。
お待たせしてしまった上にこんな駄文で申し訳ありません…
気に入らなければ書き直し致しますので、お気軽にお申し付け下さいませ!
海老で鯛を釣った感が満々ですが、これからも宜しくお願い致しますm(_ _)m




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