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「あれ?新羅、シズちゃんは…?」


脱色してたり、目付きが悪かったり。見た目は不良っぽいが、あまり授業をサボらない静雄が授業が始まったと言うのに教室に居なかった。
サボるとしても一人で…ということはあまりない。

新羅に聞いてみても彼がトイレに行って帰ってきたら居なくなっていたと言う。
よく見ると鞄も無い。早退したのかとも考えたが今日一日の事を思い出しても特に体調が悪そうだった訳でも無い。
臨也の胸に違和感が過ぎる。



「新羅…俺も早退する」
「えぇ?…もー仕方ないなぁ。静緒も臨也も借りひとつだからね」


その意図に気付いた新羅が態とらしく呆れた様に言うと臨也は黒板に向かっていた教師に一方的に早退を告げ、そのまま教室を出て行った。








屋上、空き教室、保健室、図書室。

今迄サボる時に使っていた場所を探してみたけれど静緒の姿は見付からない。
何故かまだ校内に居るような気がしていたのだが流石に勘が外れたか。と諦めて帰ろうとした臨也だったが、図書室の窓から見える校舎裏にある焼却炉の前に見覚えのある金髪が見え訝しみながらも焼却炉の方へ行くことにした。



良く良く考えれば何故静緒を探そうと思ったのか臨也にも解っていない。
友達だからと言って四六時中引っ付いている訳でも無い。
不可解な気持ちのまま焼却炉に近付くと目に入った静緒の後姿に驚く。


何故かスカートをはいていない。
何時も短いレギンスをはいているので下着が丸見えということは無いのだが、異様なことには変わりない。

さらに驚いたのが、右手にハサミを持っていて、体の前側に垂れている髪の一房をおもむろに掴むと背中の中程まで伸びたその髪を顔の横でバサリと切り落とした。



「シズちゃん!?」


名前を叫ぶと静緒は肩をビクリと震わせて振り向くが、臨也だと認識すると平然とした顔をして手に持ったままの切り落とした髪を焼却炉に投げ捨てた。
そしてすぐに次の一房も同じ様にしようとした手を掴んで止めさせ、不満を訴える目と声を無視して臨也が焼却炉を覗き込むと投げ捨てたばかりの金髪の他に切り刻まれた制服のスカート、見覚えのある文房具等が捨てられていた。


意外と可愛らしいものが好きな静緒が集めていたクマをモチーフにしたキャラクター物の文房具、ピンクやふんわりした女の子らしい色合いの髪留め等。
全て、静緒が持っていたなと思うそれらが一緒に打ち捨てられていた。



「何、してるの…?」


一見したらイジメの現場にも見えるが、敢えて臨也は「何されたの」とは聞かない。
まず、静緒がイジメられるとは考えられないからだ。
普段はおとなしいが一度キレると手が負えない人間に誰が好き好んで手を出すのか。
それに、コレは静緒が自分でやったからと確信を持っているから。


案の定、静緒はあっけらかんとした様子で何でも無い様に臨也に言った。




「俺、女の子らしいことすんの止めた。




似合わねぇもんな。
いやぁ、この学校私服OKで良かった。
別にスカートじゃなくても良いもんな。
髪も幽に手伝ってもらってもらわなきゃろくに手入れも出来てなかったし、どうせだから切っちまった。
なんでこんな伸ばしてたんだろー」



普段、ぽつりぽつりと喋る静緒がまるで原稿でも読んでるみたいにスラスラと喋る。
貼り付けたような笑みがまるでらしくなかった。




「俺が女の子らしくしようとしたところで女装した男みたいで気持ち悪いだけなんだなって思ったんだ」






笑っている静緒の目元が涙を拭う時擦ったみたいに赤くなっているのに気付き、臨也の口の中はカラカラに乾いて言葉が出てこない。





―あの子、女の子って感じじゃないでしょ?



―女装してる男みたいでさぁ、全く魅力なんて無くない?





「…もしかして、聞いて、た…」



やっとのことで搾り出した言葉に、ただ静緒は笑って首を傾げるだけだった。





「何の事だよ?」



その笑顔に、臨也は心臓に無数の針が刺さったような痛みを感じた。




アトガキ


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