▼ じゅなぐだ?
眠る少女のベッドの脇に座り、
その白く小さな手をそっと触れる。
己の手で包み込めるほどに小さなその手を
まじまじと見つめた。
白く柔らかな肌、小さな手、
あぁなんと頼りないことか。
その眠る顔は幼さが残り、
到底"人類最後のマスター "とは思えない。
…否、"世界の救世主 "の重荷を背負わせるには
惨すぎると、男は呟く。
「ん、ぅ……?」
「…おはようございます、リツカ。
すみません、起こしましたか?」
「…あるじゅなだぁ」
あぁ、寝ぼけているのだろう。
ふにゃふにゃと笑う少女はただ穏やかだ。
「あのね、アルジュナ。」
「はい、なんでしょう?リツカ。」
「世界が平和になったらね、私、花を植えるんだ。」
「…」
「アルジュナみたいな、綺麗な花をね、植えるんだ…」
少女の言葉が尻すぼみになったと思えば
どうやらまた眠りに落ちたようだ。
「ならば、私は貴女のように、気高き花を植えましょう…。」
男はそっと、呟いた。