▼ おシェイとぐだ
「どうしてこんなに気が滅入るのだろう。
我らが愛しきマスターリツカ。
ご存知無いですかな?」
ある穏やかな午後の事。
男はそう愚痴を零した。
「……シェイクスピアが締切から現実逃避したいからじゃない?」
「おっとその言葉、聞きたくないですなぁ。」
男は椅子の背凭れに身を沈める。
ぎしりと軋む音が小さく響いた。
「臆病者は死ぬ前に何度も死ぬ
とは言いますが、臆病でなくとも人は死にます故。」
「シェイクスピア、サーヴァントじゃん。」
「吾輩、弱小キャスターでして?」
そういって肩を竦める男に少女は口を尖らせる。
あぁ、何の為にお前に火をくべたのだというのだ。
「シェイクスピア、種火狩り行くよ。」
「えー?!」
少女は男の手を引いた。
口では愚痴を吐きながらも、
男はその手を優しく握り返す。
未知なる喜劇に巡り会う予感が僅かにした。