▼ ロムルスさんの魅惑の唇
「あ、珍し。」
ローマの真祖・ロムルスが
胡坐をかいて眠っていた。
部屋の隅、角の壁にもたれ掛かりすやすや眠っている。
思わず顔を覗き込む。
「まつげながい…」
眺めているとふと、
常々思っていたことを実行するチャンスなのでは
などと考える。
そっと手を伸ばしロムルスの厚い唇を撫でる。
柔らかくふにふにとした艶のある唇に
思わず頬が緩む。
前々からこの
柔らかな唇に触れてみたくて仕方がなかったのだ。
「んー…」
少々マヌケな声がする。
ロムルスが起きたようだ。
リツカに気づいたロムルスがそっと腕を広げ
リツカを抱きしめる。
「えええぇちょ、ロムルスさん?!」
「…」
半覚醒のようでリツカを抱きしめたまま
あまり動かない。
「我が愛しき者 よ、良い目覚めを共に喜ぼう。」
「お、おはよう…ございます…。あの…離して?」
「私 の腕は全てを包む…」
「離す気はゼロなんですね……。」
ため息をつきつつもロムルスの胸に体を預ける。
大きな手がそっと髪を撫でる。
ロムルスの腕の中で身動ぎしてロムルスを見上げと
ただただ穏やかな顔をしていた。
「私 に愛されし子よ。」
ロムルスの両手がリツカの両頬を包む。
親指がふにふにとリツカの頬を揉む。
優しく愛でるように
撫でたり揉んだり両頬を触れられる。
と、ふと唇に柔らかい感触がした。
一瞬何が起こったかわからなかったが
確かなことがひとつ。
……唇と唇が触れたのだ。
「……ヴェ」
驚きすぎて変な声が出る。
いやまさか彼がそういう事をするとは
思っていなかったのだ。
「ろろろろろろろろろろろろロムルスさーん?!」
「愛しき子 よ。常に私 と共に。」
慌てふためいているリツカをよそに
ロムルスはにこやかに微笑んでいた。