▼ ジュナぐだ…か…?
「アルジュナ〜」
名を呼べば、彼…アルジュナはすぐにやってくる。
とても嬉しそうな顔で。
名を呼んだだけで
幸せそうな顔をするのが好きで
たいした用も無いのについ呼んでしまう。
「あ、あの、マスター。」
「ん?なぁに?アルジュナ。」
「エミヤに紅茶の入れ方を教わりまして…
そ、その…紅茶、でも…いかがでしょう?」
インドの大英雄が、孤独が好きというあの大英霊が
もじもじと恥ずかしがり屋の女子高生よろしく
頬をうっすら赤く染めて
こちらを見ていた。
「アルジュナが入れた紅茶、
とっても美味しそう。…おねがいしてもいい?」
「は、はい!おまかせあれ!」
そういって小走りでマイルームに向かう。
少し遅れてマイルームにつくと、
白いテーブルクロスのかかった
少し大きな机に白い椅子、
机の上にはお高そうなティーカップとソーサー、
いろとりどりのケーキやクッキーなどのお菓子…
上流貴族のお茶会のイメージそのままの、
そんな光景が目の前に広がっていた。
「す、すごい……!」
「エミヤやロビンフッドが手伝ってくれまして…」
そういえばお茶会っていいよねーなんて言葉を
二人の前で零したような気もする。
が、しかしまさかこうなるとは。
「ど、どうぞ。」
席に座ると温かい紅茶が注がれたカップを差し出される。
その紅茶を貴族になったような気分になりながら
すぅ、っと息を吸い込む。
とても落ち着く、優しい匂いで
ついふっと頬が緩む。
自分が猫舌じゃなくてよかった、
なんて思いながら1口飲むと、
渋みの少ない、柔らかな甘さが口いっぱいに広がった。
「ん〜おいしい!」
「そ、それはよかった。」
心配そうに見ていたアルジュナも
リツカの笑顔を見てほっとした顔で笑った。
「マスターに喜んでもらえ幸いです。」
「あ、ねぇ、アルジュナ。」
ふと、名前が読んで欲しい時がある。
今が、その時だ。
「名前、よんでみてよ。」
「……え?」
「私の名前。」
そういうとわかりやすく狼狽するアルジュナに
思った通り!なんて心の中でガッツポーズしつつ
はやくはやく、といった目でアルジュナを見つめた。
「ぁ、えっと…、その…リツカ、様……」
なんだかその表情が可愛くて、
今度から名前で呼んでもらおう
と内心笑いながら、
まだ少し熱い紅茶を飲んだ。