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「#年下攻め」のBL小説を読む
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ボロボロぐだ子とオルタニキ

無茶を、しすぎた。


右目は既に融けて落ちた。
左目も霞んで見えない。
腹には風穴。

それでも生きているのは、
前に教わったルーン文字のおかげだろう。
が、今の魔力では恐らく、時期に効果が切れる。
効果が切れる、ということはつまり、だ。


「げほっ……」


令呪を持って命令した、撤退の命令。
そのおかげでなんとか
他のサーヴァントも生き延びている。
が、リツカが死ねば全てが終わることを
今の今まで忘れていた。

痛む身体を軋む足を無理矢理動かして森を彷徨う。
きっと近くに、"彼"がいるはずだと信じて。








血の匂いがする。魔力混じりの、妙に甘い、血の匂い。
それを辿り、歩く。が、上手くはいかない。
犬でもあるまいし。
が、案外お目当てはすぐに見つかった。

血塗れで今にも息絶えそうな、その娘。
今の、主。


「オル…タ…よかっ…た…無事……?」
「喋るな馬鹿が。」

言い捨てて素早くルーンを発動する。
これだけの重症で、生きているのは
リツカのいう根性、というやつだろうか。

「…チッ…目が融けてやがる…。
 …回復には時間がかかるだろうな…。」

鮮やかなその目は見るも無残な状態だった。
恐らく、無理な魔力の使用で
身体が保てなかったのだろう。

「他の、みんなは…無事かな…」

自分ではなく他の者を、
ましてやサーヴァントを心配するなど
愚かしいにも程がある。


サーヴァントは、人間ではないのだから。

ルーンで回復中のリツカの身体を抱き上げて
ゆっくり歩き出す。

「グズが。」
「うん……」
「他は近場にいるだろう。」

撤退した他のサーヴァント達が
リツカを置いて遠くへ行くことなどありえない。
クー・フーリン オルタでさえ、近くにいたのだから。

「オルタのおかげで、生きれたよ。」
「……そうかい。」

リツカは穏やかな笑みを浮かべている。

「…よく頑張った…」

ぎゅっと抱きしめた瞬間、
リツカが堰を切ったように泣き出した。
嗚呼、やはり怖かったのだろう。
当然だ。
この娘は、"ただの小娘"でしかなかったのだから。

「痛かった…恐かった…!」
「おう」
「でも一番怖かった、のは、
 みんな…みんな、死んじゃうと思って…!」

死が身近でないが故の言葉だろう。
未だに、サーヴァントが消えることに
抵抗を見せるリツカらしい。

「……死なねぇよ。」
「、うん。」
「…死なねぇ…。」
「うん…」
「…安心しろ。…一旦寝とけ。」
「…うん」

宥めるように声をかければ
安心したような顔でぎゅっと抱きついてくる。
此方も、壊さないようにそっと抱きしめる。
暫くして、ちいさな寝息が聞こえ出す。

遠くで聞こえた悲鳴は、
撤退したサーヴァントの声ではなかった。






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