▼ 川遊びさせたかった李ぐだ
乾いた風は砂を巻き上げ
暑さで汗ばむ肌に砂をまぶしていく。
今、リツカの周りには
珍しく沙悟浄こと李書文しかいない。
「お師さんも猪八戒のダビデ も呂布馬 もいないし!」
「神風 であったか?
トラップカードなる物があるとは思わなんだ。」
どういうわけかわからないが
謎のカードを玄奘三蔵が拾った所、
突風により皆離れ離れになってしまった。
が、幸いなことにリツカ以外
特に李 他サーヴァント達は
なんとなくではあるがお互いの位置がわかる。
また、飛ばされた時に李はリツカを
呂布が三蔵を抱き寄せていた。
今、リツカと李が 一緒にいるという事を考えると
恐らく、呂布と三蔵は一緒にいる可能性が高い。
目的地が同じならある一定地点まで行けば
合流出来るだろう、という李の案で
リツカと李は砂漠を何とか抜けて
川のある森へといた。
振り返ってみるとかなり遠くの方で
凄まじい量の砂が舞い上がっていたのを見るかぎり、
呂布達はまだ後ろの方にいるのだろう。
「川だー!川!」
川を見つけたリツカは靴を脱ぎ捨てて
大喜びでバシャリと川に入る。
「こら、お主 少々不用心だぞ?」
「李先生いるから大丈夫だもん!」
「……」
李は目を逸らし
このバカめ、などとぶつくさいっているが
満更でもない表情が隠せていない。
「先生も川入ろうよ!水冷たくて気持ちいいよ〜。」
にへらと笑うリツカが手招きするので
その誘いに乗ってみる。
「先生の足おっきー」
「お主が小さいのだ。」
靴を脱いでそっと川に足をつける。
サラサラと流れる川は冷たく心地いい。
「先生、せんせー、手 つなご!」
はしゃいでいるのだろう。
リツカは満面の笑みで此方に両手を差し出している。
普段こうやってはしゃぐ機会も少ない。
今は存分に、はしゃがせてやろうとその手をとる。
「あ、ねぇせんせー」
「む、」
「すきありー!」
叫ぶリツカが飛びついてくるものだから
李が川の中で尻もちをついた。
「やったー!」
李の膝に座って喜ぶリツカの
側頭部をげんこつでグリグリしてみる。
「あだだだだだだだだ」
「仕返しだ。」
当然手加減はしているがやはり成人男性、
おまけに武人である李の
げんこつグリグリは相当な痛さだ。
本気でやったら頭蓋骨が砕けるのではないか
などと思いながら
リツカは痛む側頭部を撫でる。
「あ、すごいこの服。」
「む?」
「水スゴイ吸うの」
確かにリツカの服は
濡れていなかったところまで水気を帯び、
濡れてリツカの肌に張り付いていた。
「布が薄いのかな…?」
「……リツカ。」
名前を呼ばれ返事をしようと口を開けた瞬間、
その言葉は李に阻まれた。
唇が触れた瞬間、
ぴりっとした刺激に体がピクリと反応する。
「……?!」
「…すまぬ。理性が壊れた。」
見えぬ部分が妄想を掻き立てる、というのは
カルデアで幼い娘を追いかけているだろう
某大海賊の弁であるが
確かにその通りであった
と李は頭の片隅で思っていた。
真っ赤な顔で此方を見ているリツカを
なんとも愛らしいと思い頬をなでた時、
視線を感じてふと見ると
ダビデがにやついた顔で見ていた。
「リツカ、暫しそこで待っておれ。
師を迎えに行って参る。」
そういってにこやかにリツカと共に立ち上がり
鬼の形相でダビデをぶん投げに行った。
ぶん投げたダビデのおかげで
呂布と呂布と一緒にいた三蔵と
合流出来るまであと15分。