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「#寸止め」のBL小説を読む
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不明






微動だにしない
Notを呼んだ。


「……………」
「…風魔、呼んだ?」

Notが
ふっとその目に色を取り戻して
こちらを見た。
『何者』でもなれるNotは
『何者』にもなれない。
それ故に、自我をうまく保てない。
Notにとって名前は
唯一の"自分である"
と証明できるものだった。

「…名を呼ばれぬと
 自我が保てないのは
 面倒ね。…ありがとう風魔、
 呼んでくれて
 その声なき声に感謝するわ。」
「………」

喋れぬ己の声を聞き、
にこやかに微笑むNot。

その笑みは
自分だけに
向けられるものではないことに
少し複雑な感情を抱く。

「…風魔…?」
「……………」
「"不足の美"に"不純"が混ざると
 彼が怒るよ。」

そう言ってNotは
"あいつ"の姿を真似た。


     いつかこの手に
(声まで真似るのは骨が折れる)
(…………………)1



 


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