×
「#寸止め」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

孤独が二つ   (足利)


孤高である、ということは、
なんと退屈だろうか。

Notは小さくため息をつく。

五月雨が振る音を聞きながら
ごろりと寝転がって目を閉じる。
退屈な日は、眠るのが一番である。

夢の中でなら何にだってなれた。
普通の人間にも、空駆ける馬にも、
自由気ままな猫にも、海を泳ぐ魚にも
何にだってなれた。
Notにとってそれは
唯一の楽しみだ。


神の使いなどと呼ばれ、崇められ、
神殿で一人住まうことを義務付けられ、
外に出ることが叶わぬNotの
ただひとつの娯楽だ。

が、最近それを邪魔する者がいる。

「Not!これはなんだ?!」

目を輝かせてNotに話しかけるのは
かつての王・足利義輝だ。
雨で泥まみれになっていたのを
Notが招いたのだが
どうやらここが気に入ったらしく
ここに居着かれた。

「…義輝、起こすなと…」
「すまんすまん。で、これはなんだ?」

Notが寝ようとすると
大概こうして起こしてくるのだ。
最近は寝たふりをしてごまかすこともあるが
その時は隣で寝だす。
…かまって欲しいのだろうかこの男は。

「…かまって欲しいのか」
「我は寂しい。」

問えば、素直に答えが返ってきた。
が、その表情は酷く穏やかで、
…まるで何もかもを諦めたようだった。

「義輝」
「ん?」
「寝ろ。夢を見ろ。」
「隣で寝るぞ」
「ん。…起きたら共に菓子でも食べよう…。」

目を閉じたNotの隣、
Notの呟きに小さく微笑んで
かつての王も目を閉じる。

孤独が二つ、寄り添った。1



 


top