▼ 虎が縁結び (宇都宮広綱)
宇都宮広綱は困っていた。
しかも現在進行形である。
「…………。」
Notという娘が
ペットの虎から離れないのだ。
「Not!
いつまでくっついてんだー!」
「宇都宮くんがこの虎 を
くれるまでぜぇーったい離れない!」
Notは最近、
同じクラスに転入してきた。
明るく、人当たりのいいNotは
すぐに打ち解けていたのだが、
その日、宇都宮は天文学的確率を超えて
風邪をひいて休んでいた。
が、翌日には治ったので
登校した途端こうなった。
Notは毛が
モフモフとした生き物が大好きらしい。
「これは俺のペッ…相棒なんだ!!」
「なんでそこ言い直したんだよ。」
なんて同じクラスの
尼子晴久に突っ込まれたので
軽く額を小突いた。
特に意味は無いが
思いの外力が入っていたのか
軽く悲鳴を上げていた。
「尼子うるさい!
と、に、か、く!!この虎は俺のだ!」
「やだー!ください!!」
宇都宮は5秒ほど考えて、
こういう時の"奥の手"をだした。
「Notが俺の嫁になるんならいいぞ!!」
「了解です!!」
「?!」
「末永くお願いします!」
そう笑うNotに
宇都宮どころか他の者まで
時間が止まったように固まったのは
言うまでもない。1
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