▼ 天使長と
「どうぞ、コノハ様。」
天使長が差し出したグラスの中には
赤くて綺麗な色の液体が注がれていた。
すぅ、と息を吸えば芳醇な香りが鼻をくすぐる。
いつもとは違うラフな格好の天使長が穏やかに微笑んでいたので
こちらも思わず口の端が上がる。
「これ、お酒じゃないんだよね?」
「はい。アルコールは入っていませんよ。」
そういう彼の手にも似たような色の液体が入っている。
きっかけは少女の何気ない一言。
『ワインって美味しいの?』
「まぁこれはワインの代わりに飲むものなので
気分を味わう程度にしかならないのですが。」
「それでも嬉しいよ、ありがと天使長。」
1口飲むと甘くて美味しい。
思わず笑顔になると天使長も笑い返してくれる。
「おいしい!」
「それは良かった。」
「初めて飲んだ味するよ」
「…そうですか。」
「でも好きな味。おいし」
「…」
「そう言えば天使長」
「はい」
「その絆創膏、どうしたの?怪我?」
「…ええ、ちょっと。」
天使長がグラスを眺めて仄暗く笑った気がした。
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