▼ トリトン先生とお昼寝少女
ある休日の昼下がりである。
少女はプールへと足を伸ばしていた。
プールの底には副担任のトリトンが穏やかな顔で沈んでいる。
最近気づいたのだが、此処は昼寝に最適なのだ。
レジャーシートを端の方に敷いてだらりと横になる。
穏やかな日差しとそよ風にうとうとと船を漕ぐ。
少女が深く眠りに落ちるまでそう長くはかからなかった。
目を覚ました少女は自分になにか布がかけられていて驚いた。
見ればそれは青いジャージの上着だった。
パッと見ればプールの底には誰もいなくて、
恐らく先生が掛けてくれたのだろうと少女は思った。
何となくそれを羽織ってみれば
当然サイズは合わなくてぶっかぶかだった。
「おぉー…」
何となく袖のにおいをかいでみた。
嗅ぎなれたにおいと、少し塩素のにおいがする。
「やっと起きたか。」
肩にタオルをかけた先生が呆れたような顔をしてやってきた。
「もっと昼寝にいい場所くらいあるだろうに。」
「此処、意外と居心地がいいんですよ〜。」
「ほら、ジャージ返せ。」
「えー…もうちょっとだけ貸してくださいよ。」
少女がにっと笑うと
先生は大きくため息を吐いて少女の頭をとても優しく小突いた。
「バカタレ。もう充分貸してやっただろう。」
「ちぇ」
渋々返すといい子だとでも言わんばかりに頭を撫でてくる。
「トリトン先生がいる所、居心地が良くて好きです。」
「…そうか。」
「だからもうちょっとだけ、
トリトン先生の隣にいていいですか?」
「あー…あぁ。あとちょっとだけ、だからな。いいな?」
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