▼ 天使長と主2
眠い、と少女は目をこする。
疲れと、ポカポカとした陽気と、
つないだ手の温かさに、ゆらゆらと船を漕ぐ。
「てんしちょ…」
「?はい、なんでしょうかコノハ様。」
「だっこ…」
つないだ手を小さく引っ張り、天使長へと手を伸ばす。
天使長は困ったように眉を下げて微笑んだ後
そっと少女を抱き上げた。
抱き上げられた少女は幸せそうに笑い、
ギュッと天使長に抱きついて頬を擦り寄せる。
鼻をくすぐる石鹸とお日様の匂いに
少女はうっとりとしたように吐息をもらした。
「てんしちょ…いい匂い…」
「羽根を少しばかり手入れしたからでしょうか…。」
「ん…」
「随分とお疲れのようで…
…少しばかり仮眠を取ってはいかがですか?」
「やー…」
「もう眠りそうではありませんか。」
「やぁ…抱っこ…」
少女はイヤイヤと首を降って天使長にしがみつく。
それに小さくため息をついて少女に微笑みかける。
ギュッと離さない少女の頭を優しく撫で
その背をトントンと優しく叩く。
「コノハ様が起きるまで、こうしていますので。
安心してお眠り下さい。」
「ほんと?」
「はい。」
天使長はそっと羽根で少女を包む。
「ん…」
「ほら、大丈夫ですよ。お休みください、コノハ様。」
「ぅー…てんちょ…おやすみ…」
「はい。おやすみなさいコノハ様。良い夢を。」
切符は天使長の優しい声。
少女はゆっくり夢へと落ちていった。
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