▼ けーきのゆめ(一応ザバ主2)
ケーキになってしまう夢を見た。
変な夢だと思う。
だって自分が自分の形のケーキになってしまった、なんて。
目は見えているし、音だって聞こえる。でも私はケーキだった。
そして、
目の前に、そっと心寄せた人がいた。
「…コノハ、様。」
いつもの真面目な顔が、
困惑したような、焦ったような顔をしていた。
そんな顔もできるんだなぁ、と思って眺める。
自分の見えない所から、誰かの声が聞こえた。
クスクス、笑う誰かの声がする。
誰の声だろうと考えてるうちに、
私の身体…と言っても今はケーキなのだけど、
そこにはナイフが刺さっていたようで。
彼はそのナイフを引き抜いたんだと思う。
赤い色をしたナイフを手に持っていた。
血かと思ったけれど、それはけして血の匂いはしてなくて、
多分、ラズベリーか何かのソース。
すぅ、っと撫でられるような感覚がする。
そのナイフできっと身体が切り開かれたんだろうな、と。
彼の手には心臓の形の何か。
赤い色をしてて、ちょっとリアルな私の心臓。
ただ、きっと本当の心臓より小さいんだと思う。
彼は、しばらく固まっていて、何かを考えているようだった。
「…コノハ様。」
私の名を呼んで彼は、意を決したように
その心臓を1口に食べた。
「ぐ、」
うめき声と口を押さえて小さく震える彼。
美味しくなかったんだろう。
吐き出せばいいのに、彼はそれを飲み込んだ。
その目は何故か嬉しげで。
なんでだろうとおもったあたりで、目が覚めた。
目が覚めてバッと起き上がる。
いつも通りの部屋、いつも通りの自分。
胸に穴は空いてないし、美味しくないケーキでもない。
思わず口の端が上がった。
せっかくだ、美味しいケーキでも食べに行こう。
少女はそんなことを考えながらパジャマを脱ぎ捨てた。
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