▼ リゾットさんにハンドクリームわける話
しまった。
シアはそう思った。
その手のひらには無香料のハンドクリーム。
少々多く出しすぎてしまったのだ。
はてどうしたものか、と
あたりを見渡せばソファにどかりと座り
新聞を眺める男が1人。
チームのリーダー、リゾット・ネエロだ。
「ねぇ、」
「…」
呼びかければ
一体なんのようだ、と言わんばかりに
新聞から目を離してこちらを見てくる。
「ちょっと左手貸して」
ぽすんと隣に座ってその手を攫う。
あっさりと攫われてくれるあたり、
信頼されているのだろうかなどと思いながら
余分なハンドクリームを
僅かにカサつくその手にわけていく。
「…また出しすぎたのか。」
「加減が難しいんだよ、アレ。」
少々の呆れを含ませた穏やかな声が降ってくる。
シアは、この時間が好きだった。
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