職場体験、最終日。
「大変お世話になりました」
「全くだ、貴様のせいで仕事が増えた」
「まぁまぁ、ハーツも最初と比べたらすっごく成長しましたよーだからたくさん依頼受けてたんですよね？」
サーからは大きな溜め息が聞こえる。迷惑や心配をかけたため、申し訳なさや感謝の念は伝えきれない。
「忙しくなった。早く成長して私を手伝え」
「はいっ！」
これは数日間彼と過ごしてきた中での最大限のデレであると思う。訓練はキツいし捜査協力は休みなしで個性の強化させられるし。お陰で何回も意識が飛んで気づいたらベッドに寝かされていた。
その度にバブルガールが今みたいにフォローしたり慰めてくれたりした。ミリオ先輩は背中をバシバシ叩いて「これで◯回目だよね！」と笑うだけだったけど。センチピーダーはいつも優しく諭してくれるこの事務所で一番まともな人だった。
本当に有意義な時間だったと思う。
30歩くらい歩いて先ほど出た事務所を振り返るとそこにはもう誰もおらず、仕事に就いたことをうかがわせる。
ヒーローたちは今日も多忙だ。
*
職場体験明け、朝。
「わぉ、麗日さん…オーラ纏ってる…」
「麗らかじゃない麗日さんだ」
教室に入ると各々が職場体験の感想を語っていた。いずとは登校中に話せてワン・フォー・オールの使い方をマスターしたと言っていたから今日の演習訓練が楽しみだ。
「環心さん！」
「どうしたの麗らかじゃない麗日さん？」
「アドバイスありがとう！環心さんのおかげで有意義な職場体験過ごせたよ！」
最初は何のことを言っているのかわからなかったけど、最初の戦闘訓練で指摘した対人格闘のことだろう。そっか、彼女はバトル系ヒーローのところに行っていたのか。役に立てたなら何よりだ。
すると、背後からの突然の笑い声に驚いてしまう。気が抜けているときは個性を展開させていないから特にビックリするのだ。
どうやら爆豪くんの頭がおかしいみたい。うん、いろんな意味でおかしいと思うけど。
私にはその変化を見ることはできないから、切島くんと瀬呂くんが爆笑している原因に触れてみる。
ﾋﾟﾄ
「やっぱ光己さんに泣きつきたくなったでしょ？」
爆発頭は爆発せずに頭の輪郭を綺麗に型どっていた。頭の形きれいだなと感心しながら少し撫でてみたらむちゃんこ手を払われた、痛い。
「なってねぇわクソが！！！」
「「戻ったー！！！！」」
どうやら彼はジーニストと馬が合わなかったようです。
「それにしてもさ、無事でよかったよ。お前ら3人」
3人とは言わずもがなステインと対敵した飯田くん、いず、轟くん。職場体験3日目の混沌の中真夜中にいずに説教のメールを頑張って送った。頑張って。
いずへのメッセージの中で飯田くんにもアホなことはもうするなって伝えてという風なことを送ったら、律儀に次の日に謝罪の電話を入れてきた。
ステインの思想をかっこいいという人もいるかもしれない。それに敵連合が繋がっているとうニュースも出た。これからは隠れていた悪が顔を覗かせるやも知れない。
でも飯田くんの意思はしっかりと固まっている。
*
同日、救助訓練。
「はい、私が来たってな感じで」
ぬるっと入ってきたオールマイトに既視感を感じながらも授業の説明を聞く。今回は救助訓練”レース”。各々の成長具合を確認しながら最短で要救助者の元へ駆けつける。
レースということなのでもちろん勝ち負けはある。誰が一番最初にオールマイトにたどり着けるか。
1組目 芦戸、飯田、尾白、瀬呂、緑谷
2組目 蛙吹、切島、砂藤、常闇、轟
3組目 青山、上鳴、爆豪、峰田、八百万
4組目 麗日、口田、障子、耳郎、葉隠、環心
個性によって組分けされている。私の組は索敵組か。比較的攻撃力がなくスニーキングに長けた組。機動力で注意するのは麗日さんの超秘だけど…これは一番先に見つけたもん勝ちだな。
注目の一組目を皆で誰が最初にゴールするか予想をしている。スピードで言えば飯田くん。ただ本調子じゃないから、尾白くんか瀬呂くんかなぁ。
「環心は？」
「んー本命は瀬呂くんか尾白くんだけど…いずにも期待してるんだよね」
『スタート！！』
素晴らしいスタートダッシュと共に沸き上がる驚き。個性を使いこなしてる、このままだったら一番でゴールを！そう期待されたにも関わらず、結局いずはビリっけつだった。そんなところも彼らしいけどね。
動きはオールマイトも舌を巻くほど別人で、一人を除いて皆感心している。
「いずってタケノコみたい」
「筍？竹の子？」
「まぁどっちも間違ってはないよ」
タケノコは最初の春は土の中。2年目の春に土から顔を出したと思ったらどんどん加速度的に伸びる。雨の次の日なんかには1日で100cm伸びることも珍しくない。
「これからもっと伸びるんだろうな。楽しみ」
さぁ、ヒーロー。ここからが君のステージだね。
【成長】
伸び育つこと。育って成熟すること。
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