道筋というもの

体育館γ。

「あの……マジっすか」

「マジだよね!シオンちゃんはタネ知ってるから後でね」

「…はい」


突如として始まったミリオ先輩VS1―Aだけど、初見じゃ絶対に勝てないと言い切っても良い。

天喰先輩の隣で観戦しようと待機するけど……天喰先輩さっきからネガティブすぎですって。

過去には立ち直れなくなる子もいたのか。少なくとも今年の1年はそんな柔じゃない。だてに敵と交戦したり、仮免取得したりしてないんだから。


「そんな心配される程俺らザコに見えますか…?」

「うん、いつどっから来てもいいよね。一番手は誰だ!?」

「俺「僕……行きます!」意外な緑谷!!」


問題児筆頭のいずか…雄英のトップといわれる彼と、今の彼らはどこまで戦えるんだろうか。


「よっしゃ先輩そいじゃあご指導ぉー…よろしくお願いしまーっす!」


スタートと同時に服が落ちる。それを隙と見たのか一斉攻撃するが…彼には当たらない。


「ギャァア!!」


一番後ろで驚いていた耳郎さんが気の毒でしょうがない。せめてパンツだけでも常時着用許可とれば良いのに。


「にしても…やっぱり強いなぁ」

「環心さんはミリオと戦ったんだろう?」

「ええ、毎回ボコボコにされてましたけど」


彼の凄さは戦って更によく解る。個性も別段強い訳じゃない。経験によって積み重ねられた強さ。


「お前ら良い機会だ。しっかり揉んでもらえ」


揉んでもらうどころかド突かれてるんですけど。


「その人…通形ミリオは俺の知る限り、最もNo.1に近い男だぞ。プロも含めてな」


プロを含めてNo.1に近いのか。まぁ、あのサー・ナイトアイのお気に入りだもんな。

そう思っている間に半分は腹パンくらってダウンしている。

その間わずか5秒。


 *


「とまァーこんな感じなんだよね!」

「わけもわからず全員腹パンされただけなんですが…」

「種明かしはシオンちゃんの後だ!サーに成長具合報告しろって言われてるから本気でいくよ」

「…なんつー、はぁ……あの時とは違いますから」


職場体験の時は一度も勝つことができなかった。だが必殺技と言える私の強みも手に入れた。だから、今回は勝つんだ。

アヘッド、モード……


「行くよ!」

「はいッ」


目を瞑り神経を研ぎ澄ませ彼の思考や弱点を視る。

下、潜ってから…真下から来るッ。拳を突き上げながら飛び出してくるのを1歩下がって避ける。

エグいな。今の当たってたら確実に失神してたよ。固く握りしめた拳が今度は左右から打ち込まれる。


「往なすだけじゃ勝てないって言わなかったっけ!?」

「透過で避けるくせによく言いますよ…ッ」


こちらが攻撃しようとしても当たらない。ミリオ先輩に初めて一発入れたときは捨て身のカウンターだった。顔面に一発もらいながらじゃないとこの人に有効打は生まれない。

地面に潜って、打ち合い。それを数回繰り返すけど、どちらも有効打は出ない。


「はぁ…ハッ、んもぅっ!!」


いくら彼の考えていることが視れたとしても攻撃を透けられるんじゃ意味がない。隙をつかないと。彼が予測していない攻撃方法で……

また地面に潜った。出てくるのは3メートル先…今だッ!


「っ?!グッフ、マジかよ!!?」

「ははッ、マジですよ」

「うん、申し分ない成長具合だよね!」

「……っしゃ〜、」


ミリオ先輩は地中にいるとき個性を解除するとバグが起こって地上に飛び出てくる。そして個性使用時は音が聞こえない、息もできない、光も取り入れられない。それが弱点だ。

彼が地中にいるときに私が走り出したって足音で感づかれることはない。

飛び出した瞬間は瞳孔の収縮で一瞬回りが見えなくなる。

呼吸で0.5秒は使う。

だからそこを叩けば良い。さっきのいずの予測は悪くなかった。ただ、飛び出した後ではなく飛び出してる時じゃないと意味がない。

地上の飛び出し地点で体操服を被せる。酸素量を視る限りギリギリまで息を止めていたから咄嗟のことに判断できず呼吸が乱れる。体操服はすり抜けられたみたいだけど…その直後に息を吸った。


「呼吸のタイミング視てたのかい?」

「人間は呼吸を無意識でするので私には予測できません。だから酸素量を視ていました」

「あっはー!1年に示しつかないじゃないか〜」


残念がっている割りには内心楽しそうだな。ミリオ先輩のビジョンでは私は彼とパトロールをしている。インターン誘う気満々じゃん。

あ、アヘッドモード解かないと。


「雄英最強に勝っちゃったよ…」

「というかあんなに体術できたの知らなかった」

「麗日が爆豪戦で見せた身代わり体操服だ」

「まぁ敗けちゃったけど、強かった?俺の個性。シオンちゃんとの手合わせでわかった人いるかな?」


ミリオ先輩の個性は透過するだけ。使い方が難しくてビリにまでなったらしい。でもそれを努力でカバーして経験でトップになった。

今回私が彼に一発入れることができたのもまぐれだ。次からは対策と予測をして必ず私を敗かしてくる。


「恐くてもやるべきだと思うよ!1年生!!」


ただ強い人がトップにいる訳じゃない。努力でトップを掴んだ人、それが通形ミリオだ。


「「「「「ありがとうございました!」」」」」


手荒な鼓舞、ありがとうございました。




【道筋】 通っていく道。
- 77 -
[*前] | [次#]

小説分岐

TOP
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -