「ペンギーン」

「! ……バンダナか」

「ねえねえ、今日って何月何日だか分かる?」

「四月一日、だろう。自分でカレンダーを見ろ」

「…あれ、もしかして機嫌でも悪い?」

「仕事をしているところにプラス、お前が来ればな」 

「えー」

「――全く、忙しいときに限って人の邪魔をする…お前の存在には、毎度迷惑してるよ」


「――…」


 ふっと薄い笑みを見せ、それから直ぐに前へと向き直り遠ざかっていった背中。その耳が僅かに紅く色づいていたように見えたのは、果たして気のせいなのかどうか。


「あー…」

 ややあっておれは小さく、意味のない声を上げる。

「……でも、ちゃんと日付は答えてたしなぁ…」

 ぶつぶつ、呟く声は誰にも拾われることはない。




『お前の存在には実際、救われてるよ』




 変換するならばまあ、こんなところだろうか。


「これはどっち…、かな」

 喜んで良いものか嘆いて良いものか。それ以前に真か偽か。
 おれはどっち付かずの困った顔で、曖昧に微笑んだ。


 その視線の先。照れを隠しきるのに失敗した顔で、ペンギンがあっかんべえと舌を出していることにも、その意味にも気づかず。

120401
 
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