「――…バンダナ?」

「ああ、起きた?」


 …じゃらり、


「何の真似だ」

「いい加減、おれも苦しいんだよね」

「………」

「なあ、あんたもそう思わないか? おれたちは敵だ。何れ命を賭けて闘い合う。今はこうしていられても、明日には船長からあんたを殺せと命令が下るかもしれない。あんたを殺したくない。それにおれは、あんたを誰にも譲りたくないんだ」

「………それで」

「うん?」

「こうしたのか」

「そう。良いでしょ? 拉致監禁。心配しなくてもあんたの面倒はおれが全部、ずっとみててあげる」


―――…





「――…ねえ」

「何だ」

「どういうつもり? て言うより、どういうこと?」

「見ての通りだ」

「…あの手錠、そんなちゃちなオモチャじゃなかったはずなんだけど…」

「ああ、大分骨が折れた」

「――…それで?」

「?」

「おれ、これから何されんの」

「ああ…それなんだが」

「うん」

「この間お前が言っていたこと、あれは、おれもずっと考えていた」

「…へえ」

「だからだ」

「何それ」

「おれの為に、」

「!」

「お前のことが大切で闘いたくなくて愛しているおれの為に、」

「…はは。それ、矛盾してない?」




「死んでくれ」







 ―――でもその気持ち、おれも分かるよ。



 囁いた声は一ミリも空気を揺らすことなく、溢れた赤の中に溶けて消えた。



120313 …何か本当にごめんなさい
 
- ナノ -