スマホ作、BL電子書籍



原稿を作る
3/3






黒澤さんがいる。
ジリジリと焼き付けるような、直射日光を浴びる夏。
夏休みも間近にせまった7月15日の全校集会。体育館の蒸し暑さを手の甲でぬぐいつつ、愛斗(まなと)は檀上を見あげていた。
そこにいるのは黒澤理一(くろさわ りいち)。
黒いストライプスーツをかっちりと着こなし、涼しげに微笑する長身の男がそうだ。颯爽(さっそう)とステージに立つあの男を見ていると、室内の熱気すら現実のものか疑わしい。
歳は26。相変わらず格好いい。
いつもはすぐ客間へ通されるため、実はきちんと正面から見たことがない。だからステージ上で百数十人の生徒に向かいマイクを握る姿は、新鮮であり珍しい光景だった。
金融関係の会社を3つ経営してる黒澤が『柊崎組』に出入りするようになってはや数年。
その間、若頭の『世話役』である愛斗が直接会話をしたことは、たまたま廊下で居合わせた一度だけ。
それでも、黒澤の記憶は色濃くのこっていた。
『ちょうどよかった。俺一人でヒマだったんだよ。ちょっと、話相手になってくれないか?』
組の応接間に、愛斗のような立場の人間が足を踏み入れることはまずありえない。ただ、あの日は高熱にうなされ、朦朧(もうろう)としていた。風呂掃除を済ませた帰りに立ち入りを禁止されている隣の渡り廊下へうっかり迷い込んでしまい、帰路を探していた所、たまたま出くわしたのだ。
もちろん愛斗の方はさっと顔を青ざめさせて踵をかえしたが。黒沢は『おいでおいで』とそばに来るよう愛斗を呼び、部屋まで連れ込まれ、たいそうかわいがられることとなった。
顔を覗(のぞ)きこんでは『かわいいね』と頭を撫(な)でる黒澤に、男といえど嫌な気などせず、それどころか純粋にうれしかった。
黒澤と話すうち、知らぬまに気持ちまで弾んでいた。
愛斗はかつて、誰からも愛でられた経験がない。
だからこそ、砂糖菓子のように甘い黒澤の言動は、こそばゆく、新鮮だったのだ。
つかの間だったけれど、日ごろから奴隷のような扱いしか受けてない愛斗には、一生かけても忘れられない、幸せな瞬間だった。
いつかまた、黒澤さんと話がしたいな。
そう想いしのんできた人が、すぐそこにいる。
目の前の檀上(だんじょう)にたち、生徒らの注目をあびている。それも、この学園の新たな理事長として。
新学期から学園の運営が変わることは知っていたが、まさか――。
ここ城西学園は、夏休み明けの9月から、公立から私立に変わるという。




この機会に文章のおかしなところを直して、改行も詰めてみました。
表外漢字でひっかかった部分については、ひらがなに戻す、もしくはルビを振るの対応に致しました。

(注意点)
字下げは行いません。
今回の方法は、電子書籍作成時に、改行後の文章は自動的に一字下げになります。
もし字下げをした原稿を使用すると、仕上がりが『二字下げ』になってしまいますので、お気を付けくださいまし。



4/10

prev next
bookmark


back




タップで読むBLノベル
- ナノ -