森(カル)



 ――温かい、雨。


 誰かが叫んでる。嗚呼……ここはメフィストの腹の中か。通りで暗い。やはり私は死んだのか。

 叫んでるのは、彼女か。

 彼女には申し訳ない事をしてしまったけれど、でも、会ったばかりの、何の罪もない彼女が死ぬよりは、ずっとマシな筈だ。

 私は自業自得で死んだのだから。これはきっと罰だ。

 償いができないのは残念だけど。ヨハンさん、ギルバートさん、アイザックさん……すみません。


 ――でも、私は一人じゃなかった。


 いつだったか皆でワイワイ作ってるのを手伝いに行ったのは楽しかったし、賞金首になった後にも賞金首と知りつつ話をしてくれた人もいた。

 ……そういえばギルバートさんはゾンビにビビってたっけ。

 結局彼の墓参りは行けなかったな。

 思えば、この街に来てから私はとても恵まれていたんだろう。
 そうでなければこんな風に後悔する事も懺悔する事もなかった。

 足掻いてはみたけれど。寿命なんて分からないもの。なるようにしかならない。それでも。

 最期に、きっと誰かにとって大切な命を一つ、守れて良かった。

 残るのは、今はもう償いの約束を果たせなかった後悔と、街への感謝と。

 悲しいかな。これももうすぐ、消えてしまうのだろう。

 折角会えたのに。名前だけでも聞いておくんだった。たとえ魂ごと消えてしまうとしても。



 ――嗚呼、ほら、意識が、もう。





救えない魂の行方
光に惹かれて
消える、なくなる、だけ。






END.

お題:Dogmatical world
2013/09/23 19:48
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