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( もしも嵐が芸能人だったら )


面倒が見切れない、と辞めていったアイツの代わりにマネージャーを任されたのが半年前。一回り以上も年下の奴に何をそんなに手を焼いているんだ。そうやって周りが甘やかすから調子に乗るんだろと呆れた反面、事務所が期待の新人だと謳い大事に育てろと言われたもんだから、厄介に思いながらも心のどこかでワクワクしていたのだ。どんな新人が現れたのかって。俺自身がどこまで奴を育てられるのかって。

だが、もう正直なところ、俺にも手がおえないのが現状。



「あれほど気をつけろと言ったのに…」



テーブルの上におかれてる一冊の週刊誌。広げられた、あるページ。はあ、っと嫌でも溜め息が出てしまう。そのページにでかでかと書かれた見出しは『プレイボーイ九条嵐、女七変化』という記事。証拠だといわんばかりに載っている男女の写真つきで、読んでいて気分いいものではないトゲのある言葉たち。顔はわからなくても撮られた女性が全員違うというのは明白。この際、内容なんて事実でも嘘でもどっちでもいい。ここに書いてある目の前の人間の情報なんて、どうだっていいのだ。



「何回言えば理解できる?」



嵐のスキャンダルはこれが初めてではなかった。どうやって嵐を売り出すか、練りに練って完璧なデビューを果たし思った通りに一発で嵐は世間の心を奪った。この世界にでっかい爆弾を落としてやった気分。プロフィールも公表していない上、加えて露出が少ない嵐の情報を求める電話なんて鳴り止まなかったくらいだ。それほどまでに九条嵐が持つ何かに惹かれる人間は多かった。
それに比例して自然と付きまとうマスコミは我先に売れる情報を掴もうと必死。
それこそ一番初めに撮られてしまった写真は九条嵐という商品に傷をつけたくないが為に事務所は金で事をもみ消した。
本人はそれを知っているのに悪びれもなく、またこれだ。
上からどやされるのは俺だぞ。どうしたものか、と頭を抱える俺の気さえ汲み取ってはくれず嵐は他人事かのように鼻で笑った。



「こんな記事が載ったくらいでいちいち呼び出すなよ」

「お前っ!ちゃんと読んでみろ!」



思わず声を張り上げる。嵐は顔色一つ変えずに雑誌に目を向ける訳でもなく全く興味を示さない。
ああ、胃がキリキリする。頭も痛む。最悪だ、嵐はどうしてこうも俺を苛つかせるのが得意なのか。
生意気なんて言葉さえ可愛く聞こえてくる。

こういった類の雑誌はあることないこと面白おかしく書き、それが致命傷となってこの業界から消えていく人間なんて数えきれないほどいるんだぞ。
世の中に与えてしまう悪いイメージ。恐れているのは、たかがそんなものに喰われ消え去ってしまうんじゃないかってこと。



「これで俺が潰れるとでも思ってんのか?」



俺の焦りをわかっているかのように堂々と言い切る嵐は挑発的。変に度胸があってどんなアクシデントにも平然としている余裕がある。その感情を露わにしないから、何を思っているのか掴めない。それが嵐の強みでもあるが、時々こわくも思う。真っ直ぐと刺すような目にごくり、唾を飲み込んだ。

こんな有無を言わさない空気を造り上げる奴が年下だなんて、まいった。



「思ってない。でもわからない」



ちょっと世間から叩かれたくらいで心折れるようなヤワな男じゃないってことくらいわかってる。むしろ鋼の心を持ち合わせてるんじゃないかってくらい嵐は物事に動じない。それは自分自身にも興味がないように見えて、面倒だとわかりきった上でも振り払うどころか思わず手を差し伸べたくなってしまうから不思議だ。手がかかる奴ほど可愛いとでも言うのか。
今は順調だとしても、ちょっとしたことが命取りになる。いつどうなるか読めないのがこの業界。これから先の未来の確実な保証はできない。それを嵐には理解してほしい。軽率な行動が自分の首を絞めるなんて馬鹿げたことにもなるんだ。



「遊ぶのはいい。でも足が着かないように遊べ。こうなるとお前一人でどうこうできる問題じゃなくなる」



本気な女なんて、どうせ今まで撮られた中に一人だっていない。遊びだと勝手に決めつけてしまうのは悪いが、間違いなくどの女も体だけの関係で欲を満たすだけのもの。現に嵐は否定しない。



「なんだ、それ。こそこそ隠れてヤれってか?」

「まあ、そういうことだな。今は嵐の大事な時期だろ」

「うぜぇ。なんで俺が隠れなきゃいけない?勝手に騒ぎを作ってんのはあっち側だろ」



心底ウザったそうに口元を歪まし僅かながらも怒りを表面に出す。
はあ、どうして噛み合わない。確かに嵐の言い分もわかるが、ここは大人しく聞き入れろよガキ。



「責任取れるのか?」



重苦しい空気が漂うそこに大人のズルさと賢さは紙一重。その二文字で試す訳ではないけど、遠く離れず似たようなもの。



「…責任、ねぇー」



その軽い口調がどうもまだ嵐は今、自分が置かれている立場をわかっていないように思えてイラッとする。これ以上の伝え方なんてないだろう。
ああ、もう。手で頭をかきながらぶれない瞳から目を逸らした。



「自分のケツくらい自分で拭ける。上にも言っとけ。俺はやりたいようにやるってな」



ワガママ。自己中。自分勝手。要は、自分が一番なのだ。そしてどこからこんなにも湧き立つのかわからない底知れるパワー。
嫌でも惹かれてしまう、絶対的何かを魅力だと言うならその魅力に俺だって会った瞬間から落ちていた。
周りを振り回しながらも、いつかコイツは頂点に立つ。ただ漠然と、だがはっきりと確信したあの日、俺は九条嵐のマネージャーになれたことを少なからず喜んだ。そうなる景色を思い描きながら、明日を見る。

大胆不敵で強気。自分を曲げる気なんてこれっぽっちもない。よく言ってくれるよ、まったく。

まあ、でも思い通りにいかないからこそ面白いのかも。なんて。


後日、嵐は世間に喧嘩を売るかのような発言をかまし注目の的となった。その潔さと自分を偽らない素が予想とは違い世間からは受け入れられ、ブラックなイメージでありながらもそこがいいんだと嵐が言い放った通り押し潰されるどころか、喰われる前に喰っちまった。



「これ見ろ!!また写真撮られやがって!!」

「撮らせてやったんだよ」

「なんだそれ」

「俺、仕事やめるから」

「――…っはあ!?」

「大事な女ができたからやめる」



…おいおい。ほんと頼むから、これ以上悩みの種を増やさないでくれ。







久しぶりすぎるくらい久々に拍手文かえてみました!一度はやってみたかったもしも話(^ω^ )桐谷のやりたいようにやりましたw嵐に会いたいとの声を聞くので、こんな形ではありますが嵐くん登場です!結果、彼に芸能人はつとまりませんね絶対無理!(笑)奴のマネージャーにでもなったら倒れること間違いなしwwまたもしも話を書きたいな☆いつも拍手&コメントありがとうございます!救われています!

◎世界は俺のもの 桐谷蓮





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