彼らがいた。
それはそれは驚いた顔をしていて。
自動販売機で、イチゴミルクを買ってから
もう一度声をかけられたのだ。






 パ  ル  3





「オレは伊月、こっちが小金井と――――」
なぜか自己紹介がはじまってしまった。
場所は変わり彼らの教室へと足を伸ばし
顔馴染みしかいないのは、木吉だけ…という恐ろしいことに
なっていたため自己紹介をし始める。

小金井と呼ばれた男子生徒は笑って
挨拶を交わし、次に無口そうだが愛想は
そんなに悪くなさそうな水戸部という男子…
それと自己紹介をしてくれた伊月とニコニコと笑っている木吉がいた。
「伊月くんでいいかな…リコをバスケ部に
入って欲しいって・・・」
「あぁ、相田はあんまりいい反応をしなかったけど・・・日向と同じで」
と少し苦笑いを交えていた。

日向?初めて聞く名前だ。
ミコトの中に一年生でその名前をあまり聞いた事がなかった。
一年生の中でも有名な人物なのだろうかとも
姿が見えないので脳内で考えても見る。


彼もバスケ部員なのだろうか…だけれどもその中には
日向という男はいないらしく話が終わりかけようとしたときだ
笑っている男が一人。…木吉だ。
一人だけなんの不安もない笑みをこぼしている。

「でもそれだけ安心した部分があるな。中途ハンパは嫌いってことだろ?」
よかったと安堵した様子でいって笑っている木吉に対して
心境はミコトは複雑であった。
木吉とはあの時以来話す機会なんてほぼないに
等しいせいでもある…。月刊バスケでの彼の記事は
田舎ながらも知っていてミコトからすれば有名人?みたいな
そんなものだ、が軽く後悔した。

寛大なのか、それともただのバスケ馬鹿なのか…
両方ともとれるその考えを頭から抜け出せないでいる。
そして先ほどのリコの言葉がどうしても突き刺さって
どうしようもなく酷く心が揺さぶらてあんまり彼らの
話に耳を傾ける余裕なんて、ミコトにはなかったらしい。
ちらりと教室の前、つまりは黒板の上を見れば
もうすぐ昼休みが終るのが目に見えた。







「…あ、ごめんね。教室戻らないと」
「おお!悪かったな愛川」
「うん、それじゃバスケ部頑張ってね」
そういって、笑っていたつもりだった。
うまく笑えていたのだろうかはさておき・・・
教室に戻ろうかとも考えたが、考えが変わり教室とは反対方向へと
歩き始めていた。




すごくムカムカしていた。





サボっちゃおう、なんて思い階段を下りようとした時だ。
キラキラと輝く髪の毛が見えた。キンパツ?
うちの高校に不良くさいのなんているんだ、
なんて他人事のように思っているとギロリと
目から敵意まるだしに一瞬驚いた・・・

「アナタもサボリ?」
「・・・あ?あっああ」
ともごもごとしていて少し分からない。
臆病なキンパツなフリョーか、なんて
思いながらも彼は何だよ、と文句が続く。
「別に、昼休み終っちゃうから・・・性格的にアナタ真面目そうだし
さっさとクラス戻ったほうがいいよ?」
にこっと笑ってみると彼は「は!?」といわれた言葉にイラッとしたのだろうか
それとも図星を付かれたのかはわからないが。


予鈴が鳴った、あと5分後くらいには授業開始になるだろう。
その前にさっさと校舎から出て校門にいる先生から逃げ出さなければ
と、目の前にいる彼を無視して階段を降りて行った。



バスケがしたい、したいのはバスケだけど
一人のバスケなんて、楽しくない。
チームが欲しい、信頼できる、バスケがしたい…














そう、想っていたのに。
「(やっぱり一人ってつまらないな…)」
沢山あるストリートバスケコートでは日がなくなった午後の8時でも
いつもなら人は沢山いるはずなのに今日に限って人はまるでこの時を
見計らっていたかのように人がいない。
ボールを取り、軽くドリブルをし、体を動かしてみれば数週間も
動いていないのを実感をしてしまった、身体が少しだけ怠けている。
でも、気持ちがいい…それがミコトの感想だった。

風がひんやりとしていて体が熱くなっていたのに気持ちよくて
笑ってしまい、そのままゴールまでドリブルしてシュートを
かましてみた。



「(リコにはちゃんと明日理由言わなくちゃな…)」
数時間前にリコからメールが来てすっごく心配されたのを思い出す。
上手く先生を誤魔化したとかかれていて彼女らしいな
なんて想いながらも、先ほどのモヤモヤが消えていた。






「っしゃ!」
最後にダンクシュートを決められて、何かをふっきれのか
ミコトはボールを手に取りリュックに入れると家へ向かう道へと戻る
様に足は確実に、地面を蹴りながらも家路へと急いだ。
入れ違いで、数十分後にはあのキンパツの男と木吉が
一対一で戦うのを、ミコトはまだ知らなかったのだ。


翌日の朝、リコはバスケ部の誠意を見てバスケ部の
マネージャー兼、カントクになったのだった。






2012.09.29

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