tko02


※すこし違うなにかの続きもの。
高尾:中学3年卒業
主人公:社会人1年


受験が終ると解放的になるというのは
嘘ではないらしく、やっと追いつける気がして
久々に電話帳にある良助の名前を見て笑みがこぼれた。
「良助さん」
ずっと、隣の家にいた兄みたいな人と話すのは
実に何年ぶりだったのだろうか…中学2年生の冬から
隣同士というのにも会わなかったし尚且つ、忘れられたのかと
想ったらまさかの出来事すぎて携帯のメール着信音を聴いた瞬間
心臓が一番どくりっと高鳴った。

入学祝に買って貰ったプレゼントが目に飛び込む。
きっと高かったんだろうな、なんて思いながらも
少し高そうな金属がきらりと光る…。

卒業式にも来てくれるといっていた…
全てを伝えてみようかと、想うようになった。








3月、中学の卒業式に良助は休みをもらい
母校でもある中学の門の前で待っていた。
生徒達は先に入っていて保護者達は体育館へ
先に行ったり、良助と同じく門の前で待っていたりと様々だ。
ポカポカする太陽の暖かさは今日を祝福するかのように
冷たい風にも負けじとサンサンと照らす。

「ごめんね良助くん」
「いいえ、来たばっかりですから…」
スーツ姿の良助と同じくやってきた高尾の母は
清楚な服装でやってきた。中々若いお母さんをもつ彼が
ほんのちょっぴり羨ましい…。別に母が見た目がどうとかではなく
ただ昔からの小さな憧れだったりする。


「でも和成の卒業式まで来て貰っちゃって…なんか申し訳ないわ」
「別にボクも行きたかったのでいいんですがね」
「もう…本当に良助くんってば和成に甘いんだから!」
いや、それおばさんがいうかな…
なんて思いながらもやっと現れた人が来たのをいいことに
さっさと門から体育館へと移動をしはじめた。





体育館へと行けば並べられたパイプ椅子に腰を落し
とりあえず前をむくと「XX回 卒業式」と垂れ幕が
掲げられていて回数をみると自分は何回目だったんだっけ、と逆算をしてみる。
そう思うと大分前に卒業したんだなーなどと
しみじみ思ってみると、時間は午前9時…卒業式がはじまった。






卒業式が終ったのは3時間後の12時であり、涙なしでは
語れないように卒業生の両親達はひっそりと涙をこぼしていて
我が子の成長を改めて思い知っていた。
案の定、隣で白いハンカチを持っていた高尾和成の母も
ぐすりと涙をしていたのをみてなんか少し不思議な感覚だ。

「(でも和成くんも、卒業か…)」
最初あんなに小さかったのになーと思い出せる範囲の
思い出はどうしても狭すぎて、だけれどもやっぱり成長はしているのだろう。
あの日あった時に既に思っていたことだ。

卒業証書を貰っていた和成を思い出すと他の生徒達からの
歓声も上がっていた。多分、後輩の女子達からだろうか。
やっぱりすごく後輩に慕われているなーと思っていた時だ。
卒業式が終り、明らか自分よりも年上な人たちがゾロゾロと
移動する中マナーモードにしていた携帯が胸ポケットで
自分を呼び出していた。

青い点滅、ディスプレイには【高尾 和成】
と出ていて電話に出てみれば聞こえるのは賑やかな声と
電話をかけてきた張本人の声が聞こえる。

「良助さん!お疲れさん!」
「って僕にかけていいの?」
「いんすよ。ちょっとこれから写真大会とかあるし
どっかで暇潰して貰ってていいっすか?」

声は弾んでいて元気だなーなんて思っていると携帯から
『和成くん!』と可愛らしい声が上がり和成自身もおー!
と反応をしているではないか。
「わかった。とりあえず何かあったら連絡くれれば行くよ」
「流石良助さん。まあすぐだと思うから!」
と言って電話は切られた。
というよりも流石に写真大会とか、卒業アルバムに一言とか
色々書けば数時間以上はかかるだろうに・・・


彼の母もデジカメの写真とりあえず現像して来るわ!といって
先に帰ってしまったから少しだけ時間を持て余すな…
と思っている時だ。
「(そういえば)」
数年前と同じなら、と頭の脳裏に浮かんだ場所が思い出される。
ジャリッと靴は砂利の踏む音をさせながらも校舎とは反対方向へと
足を運ばせたのだ。


着いた場所は校舎裏のでかい桜の木の下だ。
卒業生がいるのかと思ったが人っ子一人も
いなく変な感じだ。
校舎内ではまだ和成は後輩や同級生に
捕まっているのかな、と思っていたとき
後ろからぽんっと肩になにかが乗った。
「どしたの?」
「・・・びっくりした、和成くんか」
「何?誰かと思った?」

にーと無邪気だが意地悪な笑みを零しているのは
今回卒業式に来てといってきた張本人でもある。
片手には卒業証書が収められている筒に
アルバム。それとやっぱり大人気制服のボタンが
なくなっている。

「すごい人気っぷりだな」
「そうかね?あんなんで良かったらって思うけど」
今なんて制服欲しいとかいうんだぜ、とケラケラと
笑っている彼は実に晴れ晴れとしている。
まるで、今日の青空に似合う。


「オレさ、良助さんのこと好きだぜ?」
「…ありがとな。僕も和成くんのことは弟として
すごく好きだ」
桜が綺麗に見えて、校舎裏に呼ばれれば普通だったら告白という
シュチュエーション、安直だがわかるかな…と思いつつ
いざしてみたら…アンタはやっぱり鈍感すぎる。




【鈍いにも程がある】



「しかし、桜綺麗だね」
正面を向いていた良助が上を見上げる。
綺麗な桜が満開だが、だけれども強い風が吹いた瞬間
桜の花びらは散り、空中に舞い踊る。


「そっすね…ねえ良助さんさ」
「?」
「次は飯食いに行こうよ。」

笑って、次の約束を取り付ける。
逃がしてやらない…やっとスタートラインに立てたのだ。
しかしそんな良助は目がきょとんとして、年上に見えなく
高尾はその顔をじっとみていた。
そんな高尾の思惑なんてテンデ感じていない
良助はそうだね、と笑顔を高尾に向ける…当たり前じゃないかと付け加えられて放たれた言葉。
なんとも言えない感情がグルグルと高尾の胸を突き刺す。

この人の鈍感をどうすればいいのか
分からなくて彼の唇を塞いで見た。
桜が流れていく音も、風の音も全て
遮断したかのような一瞬に、彼の瞳は
まるで信じがたいという瞳に変っていた。
ボールを相手からとったかのように、笑みがこぼれた。

やっぱり攻めないと気がすまない。

「オレの好きって、こーゆーコトなんだわ」
唇に手を添えて良助にそう耳にそう呟いて
言い放つと良助からはなれていった。
「じゃあ、次は飯楽しみにしてるっす!」
明るい声でオレは何を思っているのかわからない
アノ人に声をかけた…余裕がなくて、彼を見れなかったのだ。


2012.10.18

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