「(今日は連載小説の更新日・・・)まずったな・・・」
赤坂 優太郎 は悩んでいた。




・・・act2



今日は大学での勉学に励もうとしていた 優太郎 の目の前にある
一通の茶色い封筒、それをみて一気に顔色が青くなるのが
本人でもわかったようで、今の経済の時間の教授の声も遠くなってきていた。
「(たしか島田さんに渡したと思ったんだけど・・・)」
なんてこった・・・とヒトリで自分の失敗に頭を抱えているとくしゅんっと
隣りの席のコのクシャミが 優太郎 を一気に現実へと呼び戻した。
そういえば、今日隣にいる席の子・・・授業開始から結構くしゃみも
しているし、ずるずると鼻を鳴らしていたな・・・と思ってちらりと
優太郎 は隣のコを見てみた。

「(俺よりも・・・年下だよな・・・)」


その隣りのコは男の子で焦げちゃの髪の毛の色に黒くて
でかい瞳、そして童顔っぽさからして今年入ってきた新入生なんだな、と
思って隣の子の肩にとんとんっと指で叩いた。
【これ、よければ使って?】と机においてあった自分のノートの
右端に言葉を書いて彼に見せる。
そしてポケットティッシュと白いハンカチを差し出して・・・







「本当にすいません・・・」
「いいよ、薬もあるから飲みなよ。」
講議が終わり、疲れて背中を伸ばすものもいれば
優太郎 のように隣りのモノに話しかけたり、次の時間まで
寝ているものもいる。
そのくしゃみや鼻水で苦しそうにしている青年に
快くクスリを渡す 優太郎 に彼の顔は嬉しそうな顔と苦しそうな表情が
混ざっている。
「美咲・・・あ、 優太郎 先輩。」
誰かの声がしたのかと思ったら眼鏡の青年で、 優太郎 をみて
顔が引きつっている。
その引きつった顔を美咲と呼ばれた青年はわからなかったらしい・・・。
「あ、角の後輩?」
「えぇ・・・美咲、 優太郎 先輩と知り合いのだったのか?」
「いえ・・・んんっ!!」

美咲と呼ばれた青年が言葉を交わそうとしたときに咳が急に
来たのか手を当てて何回かせきをしていた。

「美咲、俺ちょっとサークルに用事あるから。」
「あ・・・はい。」
「悪いな。」
と笑って角先輩は行ってしまい残された2人となってしまったようだ。
確か、 優太郎 先輩と言ったか・・・ぼけっとしている美咲の脳内で思い出した
かのように頭で思っていると美咲があの、と声をかけたきた。

「俺は高橋美咲って言います・・・あの、先輩の先輩・・・なんですか?」
「あぁ、俺は 赤坂   優太郎 。角には・・・ってか親父さんには
お世話になっているんだ。」
「あ、そうなんですか・・・。」
そうなのか・・・と素直に思っているとぼけーっとしていた顔だったが
次の講義だと判ると場所を移動するように2人は歩き出した。








「へぇ、じゃぁ今はあの宇佐見さんと同居」
「じゃなくて、居候させてもらってるんです!」

数時間後、さっきまでの鼻水やすすりの音やらはどこへやら・・・
元気になった美咲は 優太郎 と学食を食べていた。
テーブルにおいてあるプレートの上のご飯のメニューは
美咲が好きなメニューの学食になっていて喜んでいる。
そんな中、 優太郎 と美咲の身の上話が上がっていた。


美咲から聞いたことは、兄が自分を育ててくれた・・・兄が
いけなかったこの大学の経済学部に入学するためにあの宇佐見秋彦に
カテキョしてもらい合格、兄夫婦は大阪にいるため、現在は小説家の
秋彦宅で居候させてもらっている、ということを普通に初対面も
いいところの 優太郎 に言っていた。




「そうか、苦労してるな。」
「そんなんじゃないけど・・・ 優太郎 先輩は」
「あ、俺は 優太郎 でいいよ、」
「・・・ 優太郎 さんは何年生なんですか?」
「・・・さぁ?」
「・・・今すっごい爽やかに交わしましたよね。」

まるで角先輩みたいだ・・・なんて言ったら 優太郎 さんはどう
思うのだろう・・・と思っていたときだ。
「(ん? 赤坂   優太郎 って・・・何処かで・・・)」
ふと思い出したのか、先ほどの紹介の苗字と名前に美咲の頭の
中でピタリと止まった・・・しかし、それは一瞬で 優太郎 って名前
くらい沢山いるもんな、ぐらいで終わらせてしまった。




「俺は卒論が毎回が遅れてるんだ・・・だからね。」
「そうなんですか・・・」
失礼だが頭が悪いのか?とも思うのだが・・・と先輩を目の前にして
そんなことは美咲はいえないであろう。
自分だって補欠合格の身分でもあるのだから・・・・




「あ、俺今日の授業はないんだ・・・高橋君は?」
「俺もないです・・・あの。」
「なに?」
「俺も・・・美咲でいいですよ。」
笑って言う美咲の顔にぽかんっと顔が呆然となっていたが
その美咲の言葉が嬉しかったのか「ありがとう。」と笑って言うと
なぜか、美咲の顔が真っ赤になって(どうしたんだ俺!)とか
思っていると
「じゃぁ、一緒に帰ろうか。」
と食べ終わった 優太郎 がそういった。




*****


「あ! 赤坂 先生!!」
校門前で待っている赤いスポーツカーとピンク色の軽自動車。
美咲はその赤いスポーツカーの人物を判っていて
ピンク色の軽自動車は美咲の隣りにいた 優太郎 が覚えがあるらしい。
「ウサギさん!」
「島田さん!」
同時に声が上がると、赤いスポーツー・ピンクの軽自動車の運転手達が
降りてきた・・・。
赤いスポーツカーの男は、あのいわずと知れた宇佐見秋彦であり
その隣りにいるふわふわな巻き髪の美女にも目が留まる。
島田 カナコという女性である。

「あ、島田さんごめんね。」
「いいんです、原稿・・・預からせていただきますね。」
とあの朝に私損ねた原稿が入っている茶封筒を手に持ち
島田は隣りにいた身長が高く美形な男をみてペコリと
お辞儀をするとさっさと軽自動車で去っていってしまった。


「で・・・美咲、なんでこいつと一緒なんだ?」
「へ?・・・ウサギさん、 優太郎 さんの事知ってるの?」
本当に知らないのか・・・と可愛いのか、バカなのか(といっても
秋彦からすればバカ可愛いの間違い)判らない・・・
「あー、美咲・・・宇佐見さんも俺も小説家なんだよ。」
「・・・あ!」
やっと話が通じたようで 優太郎 もほっと胸をなでおろした。
秋彦はふーんという顔でこちらを見ている・・・
「美咲、帰るぞ。」
「あ・・・うん。じゃぁ又明日。」
「あぁ。」













最上階にある一室を開けて、秋彦は美咲にぽんっと何かを渡した。
それは単行本のサイズでタイトルが付けられている。
「向日葵と・・・太陽?」
【向日葵と太陽】と書かれていて表紙は青空の中向日葵畑に
子供とスーツを着ている男のシルエットがついている。
帯があってその名前に驚いた。

新人賞受賞作品: 赤坂   優太郎
若手が描く世間を気にする男と両親がいない孤児院にいる
少年少女の話・・・
出版社は秋彦が所属している丸川書店ではなく大海書店という。
確か自分が好きだった漫画とかがよく載っていたものだったはずだ。
しかし、数年前に倒産していて全て絶版になっているはず・・・
「うわー、高校時代から 優太郎 さん書いてたんだ。」
まさか、ウサギさんが見せるなんて・・・っとちょっと怖く感じる
高橋 美咲でありました(笑)


「あぁ、今は俺と同じ丸川書店だからな・・・」
「へぇ・・・ウサギさんは 優太郎 さんの小説好きなの?」
「・・・そういう意味じゃなくてな・・・」


ちょっとだけ、気になった本だった・・・と小さく呟いた言葉に
美咲は気がつかなかった。



*****





「あ、 優太郎 さん。」
おかえりなさい。
隣りの部屋にある上條先生のところで鍵を開けていたのは
真っ黒い髪の毛で黒い瞳の青年の草間野分である。
手には沢山のスーパーの袋が置いてあって大変そうなのが判る。
「あ・・・草間さ・・・」
「あ、俺のことは野分で結構ですよ。」
「――野分、今日は終わったのか?」
「一応、今日はなんとか早めに帰れましたから。」
「・・そうなんだ、」
じゃぁ俺はコレで、と自分の部屋の扉に鍵を入れた瞬間
野分の声が急に上がった。
「あ、 優太郎 さん・・・」
「・・・?」
「今日はヒロさんと鍋するんですが来て下さいね。」






野分の言葉にはなぜか俺が否定できないと思った瞬間だった。
・・・なんか俺と会ってからお前変わっただろう、と突っ込みたい。


2008 1109


suzunoasaka dream novel



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