不動



『あきおくん、あきおくん』

「なんだようるせぇな」

最近気づいたことがある。
いま俺の名前を呼んだこの古手川は前までは俺にとってただのうぜぇ女だったが、最近はこいつがいなくなるとむしゃくしゃする。自分ではこの感情を一般的にどういうか理解はしているが……どこかで"認めたくない"という感情が働いているのだろうか。

「…で、なんの用だ」

『……え?』

古手川は面食らった顔をした。え?、じゃねえよ。話しかけてきたのはそっちだろうが。

「用があったから話しかけたんじゃねえのかよ」

『だ、だってあきおくん、いつも私が話しかけてもすぐにどこかへ行っちゃうじゃない』

…そういえばそうだったかもしれない。先程も述べたが、こいつのことはウザイ女だと認識していた。それ故に気にも止めず無視をしていたのだろう

『だからちょっとびっくりしちゃったけど…初めて返事してくれた。嬉しい』

そう言ってふわりと笑んだこいつに不覚にもキュンときた、気がする。



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