※ 緑ルートだけど家康死んでます



天下は俺が家康を殺したことによって石田のものとなった。
毛利は関ヶ原の後謀反を起こし、四国へと攻め入ってきたが人間が持って生まれる差で俺の前から散っていった。
皮肉なことに多くの仲間が死んだこの場所で、首謀者である毛利もあえなく散っていったのだ。
結局、家康は何もしちゃ居なかった。だが俺は殺ってしまった、これだけは変わらない。
毛利を憎もうが、俺が深く後悔しようが何も変わりやしない。俺は自らの罪を水に流そうとは思わない。
間違って家康を殺した罪も、まんまと毛利の策にはまった愚かさも忘れようとは思わない。


「……忘れる、ねぇ…」


今宵は見事なお月さんが世を照らしていた。
俺は1人、この傷ついた心で静かな月を見ながら酒を飲んでいる。
杯にまん丸なお月さんを映し、そのままごくりと飲み干せばまるでお月さんを飲み込んだような錯覚を覚えるほど酔っているようだった。
最近は毎晩こうして月を眺めながら酒を飲み明かしているような気がしている。


「あーあ、前はよかったなァ…」


杯に酒を注ぐたびに過去を思い出す。
最初に毛利に喧嘩を吹っかけられたこと、家康と友情の約束を交わしたこと、野郎共と大海原に出たこと…思い出すことはすべて失ったものばかりだ。
どうしてあの時は家康を信じなかったんだ?どうして俺は直接冷静に話をしに行かなかったんだ?
後悔に苛まれ、舌を打つ。杯に注ぎすぎた酒がこぼれそうになっていた。


「っと…もったいねぇことしちまいそうだったぜ…」


後悔を飲み込むように注いだ酒を一気に飲み干す。
頭が痛ぇ、身体も十分に熱ぃ、思考は回らねぇ。夜の潮風が火照った身体に当たると風の吹くひと時だけは熱を奪い去っていってくれた。
ああ、できることならこの後悔も――。


「……失った…?」


ほんの少し冷えた頭で考えれば、今俺は失ったことばかりを思い出すと…過去を懐かしんでいた。
失ったものは確かに数多にある。大切だったものも含めてだ。だが俺はとんでもねぇことを…?

安芸の毛利と土佐の長曾我部、俺らは長きにわたって対立しあっていた。常に決着のつかない戦を繰り返していた。
そりゃあ俺はあの飄々とした態度や睨んだ者全てを竦み上がらせるような冷酷な目が大嫌いだったが、だがいつも1人の奴を放っておけなかったのも事実だ。
冷酷な瞳が孤独の瞳に見えたのも、事実だ。敵でありながら気にかけていたのも…事実だ。


「……忘れる、ねぇ…」


俺は先ほど口にした言葉をもう一度酒を注ぎながら吐き出す。
後悔は水に流さないとは言ったが俺はあいつを忘れる。忘れて野郎共と大騒ぎして、笑って、楽しくこの人生を全うする。
俺はあんたとは違うんだ毛利さんよ。すべて真逆なんだよ。
あんた以上にこの命を楽しんでやる。あんたみたいな人間のことは俺の記憶のどこからもなくしてやる。
俺から、あんたの存在を消し去ってやる。
あんたのその目。あの雰囲気。孤独。すべて…もう思い出してしまわねぇように…。

杯の酒を飲み干す。ああ…頭が痛ぇ…。


「ああ…お月さんよ…、お前さんも孤独なんだな…まるで…あいつみたいじゃねぇか…ったくよぉ…」


杯にはあるはずのない液体がぽつぽつと杯の底に従い、液体を溜めていた――。



月呑みの夜

こりゃあ、いつまで経っても忘れられそうにねぇな…
もしかしてこれもあんたの策なのかい?


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しばらく経ってから失ったものをぽつぽつ思い出してきて、
あれもしかして俺、あいつも“失ってる”んじゃ…てなってる元親さんの1人酒の話。
後悔もしてない、悲しくもない、あいつのことなんて忘れてやる。って思ってるけど本当は後悔してるし、孤独のまま死んでいった元就の事を考えると悲しいし、ふとしたことで思い出しちゃう元親さん。
元親は優しすぎるから元就のことは絶対に忘れられないと信じてる。
だからふと、あぁあいつの笑った顔見たことなかったな…とか思えばいい。


友人リクエスト瀬戸鬱でした。
お粗末さまでした!


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