今日という日に男3人でカップ麺は切なすぎる、そう思ってモスへ行った。
したら、レジの女の子が執拗にモスチキンとケーキバーを勧めてきて余計切なくなった。
俺は飲み会行くんじゃねーアシスタント先の男の部屋で食うんだ。
一緒に食うのはケーキにキャーとか言う女の子じゃなくてウキャキャと騒ぐサルとヒゲクマなんだ。

「まあ買ったけどな、モスチキ」

香ばしい匂いにサルとクマが寄ってきて俺はにわか飼育員の気分になる。
ファーストフードは油っぽいから、食事中は原稿厳禁だ。

「ねー福田さんチキン!」
「誰がチキンだ。モスチキはこの袋」
「あ、クリスモスパッケージ」
「中井さん遅いっス。今月ずっとこの袋でしたよ」
「もうすぐクリスマスですしね」
「は?今日だけど」
「あっ?」
「新妻先生、今日がクリスマスです」

爆音を突き破って、新妻くんが悲鳴をあげた。

***

もう1回待受を確認して、雪乃はため息をついた。
メール、ゼロ。
着信、ゼロ。

「24か25、僕のために空けといてほしいです」

まだハッキリわからないけど、どっちか休めますからと言っていた。
蕩けるような笑顔だった。
あれは、私の妄想じゃなかったはずだ。

「雪乃いい加減にあきらめて飲めー」
「そーだよ。飲み放題の元取れないよ」
「だめ。酔ったら、電話が来たときに何言うかわかんない」
「いいよ死ねゴミカスとか言えば」
「違うの。死ねゴミカスって言うために飲まないの」

ちょっとでも理性が飛んでたら、エイジの声を聞いたとたん許しちゃう。
ぜったいにそーなる。

でも、さすがに懲りた。
もう待ち続けるクリスマスは嫌だ。
彼氏から連絡ないから飲み会に混ぜて!とか惨めすぎる。
ギリギリで予約人数変えると店員さんも困るし。

来年はきっとステキな人と付き合って、クリスマスには私が待たすんだ。
ディナーの予約に遅れるかと思ったよ子猫ちゃんとか言わせてやる。

あー待ってやっぱナシ、今のはキモイ。

「ね、お願い、誰かもっかい私の携帯に電話かけてみて」
「あのねー携帯がダメなんじゃなくて、彼氏がダメなの。わかる?」
「ねーお願い。もし皆が断ったら、次は店員さんに頼んでやる」
「もう、しょうがないなー」

着メロが鳴らないと良い。
そしたら本当に携帯がダメってことだ。
エイジは今も何度も私に電話してるのかもしれないってことだ。
携帯会社のトラブルで通じないだけで。
アパートに来ても私がいなくて、きっとしょんぼりしている。
もしかしたら、早く連絡しなかった自分を責めて今度から気を付けるかも。

〜♪ last christmas I gave you....

「雪乃のケータイ、鳴ってるよ」
「……わかってるよ」
「じゃなくて!あたしかけてない!」
「それ彼氏じゃないの!?」
「もしもしエイジ!?」

そういえば、着メロが期間限定で無料でエイジ専用曲も含め一括変更したっけ。
焦りのあまり、ここが店内だってことも忘れて電話に出てしまう。

『ふえーん雪乃さんゴメンナサイー』

電話の向こうで、天使が泣いていた。

「……うん、うん、そっか」
「……いいの!それなら仕方ないよね」
「あ、ゴメン私いま居酒屋来てて、」
「あ!ううん!ちょうど終わったとこ、すぐ帰るね!」

メニューで頭を叩かれた。
睨むと紙ナプキンにアイブローか何かで
『死ねゴミカス ← 言え』
と書かれたものをつきつけられる。

「じゃあ後でね。エイジ、愛してる」


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -