すこしだけ、くやしい
納得がいかないと鬼道は繰り返した。
豪炎寺と鬼道はベッドに向かい合って座ってはいるものの、着衣は全く乱れておらず、そのような雰囲気は微塵もない。
正しくは鬼道が豪炎寺を拒絶しているのだ。
「何故いつもいつも俺が下なんだ」
「今更何を言っているんだ。鬼道のほうがかわいいからに決まっているからだろ」
「かっ、かわ……っ」
豪炎寺のさらりとした発言が鬼道の逆鱗に触れる。
ぶるぶると怒りに身体を震わせ、その勢いは豪炎寺を押し倒すという行動になって表れた。
「俺は男だ。かわいいなんて言われても嬉しくないし、もう言わせるつもりはない」
「つまり鬼道は俺を抱きたいのか?」
「そうだ!大人しくしていろよ」
「できるならやってみろ」
豪炎寺のあくまで余裕といった態度が火に油を注ぐ。
まずはキスからだと噛み付くように唇を合わせた。
ここで主導権を握らなければと躍起になっている鬼道は隙だらけで、豪炎寺にシャツを捲り上げられても気が付かない。
豪炎寺の指が鬼道の素肌をまさぐる。
途端に鬼道の息は乱れた。
「ん…っやぁ……やめ、ろ」
「触っているだけだ。気にしないで続けてくれ」
「んんっ……ふ、ぅ…ん」
触れたところからじわじわと甘く痺れが走る。
膝立ちになっている足にも力が入らない。
鬼道の最初の威勢は最早消え失せ、撫でさするような豪炎寺の手の動きに翻弄されていた。
「どうした?まだキスしかしてないじゃないか」
「もう、いい。いつもみたいにしてくれ」
「俺を抱かなくていいんだな?」
立場が逆転し、豪炎寺に押し倒された鬼道はもごもごと吃りながら口を動かした。
『いつも俺ばかりが気持ちよくなってるみたいで、少し悔しかったんだ』と。
それであんなことをしたのかと納得すると共に、豪炎寺は鬼道だけじゃないと言い返す。
「その証拠にほら、もうこんなになっているだろ」
「すごいな…」
「鬼道といるとすぐこうなるんだ」
二人の若く青い性は一回では収まりがつくことはなかった。
*豪鬼フェスタ提出作品
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