「兄さ〜ん」
「なんだ、那智」
「ちょっと、笑って?」
「は?」
「ほらほら、笑って笑って〜」

那智の手には携帯電話。

「僕を撮っても何にもならないだろう?」
「そんなことないよ、慧の笑顔は貴重だし」
「僕は笑っているつもりなんだが…」
「え、いついつ?」
「いつもだ!」
「おれ、笑ってるとこ、見たことないよ?」
「それはそのタイミングに那智がいないだけだ」
「あ、でもせんせいの前でよく笑ってるよね、慧は」
「なっ!そっ…、そんなことはない!」
「あー、ダメダメ!慧ったら笑ってって言ってるのに〜」
「笑えと言われても急には笑えないな」
「じゃあ作り笑いとか」
「こ、こうか……?」
「………慧、わざと?」
「僕はいつも真剣だ!」
「顔、ひきつってるけど」
「…そ、そうか?」
「あははっ、でもレアだから撮っとこ〜」
「おい那智、ふざけるな!」
「ごめんごめ〜ん」


「それにしてもさ、本当、慧は笑うのだけは下手だね」
「くっ…!僕に不可能はない!那智、今日から特訓だ!!」



──数日後

「はい、これ」
「なんでぃ?」
「この前言ってた、慧の笑顔の写メ」
「弟君がさ、また口から出任せを言ってるのかとドマジで思ってたよ、ンフッ」
「ですなぁ〜。ほじょ兄が笑うなんて想像出来ないナリ〜」
「くぁああ……どうでもよくないか?」
「まぁいいじゃねぇか!見てみようぜ!」


「げっ!なんでぃ!?この気味悪いのはよ!」
「なんかぁ、怖いですよぉ〜!」
「こんな笑顔じゃやっくんみたいにティンカーちゃんも怯えちゃうよね」
「斬新な笑い方、ととらえてみるのはどうだ?」

「成っちょたち〜。慧の悪口は許さないぞ〜」
「悪口というよりは事実を言ってるだけだな」
「そうでぃそうでぃ!こんなのは笑ってるって言わないんでぃ!」
「慧はカメラを向けられて緊張してただけだよ」
「んもうMMDB、マジマジドマジでブラコンだよね弟君は」
「ピーちゃん、そんな本当のこと言ってはいけませんよぉ?」



実はこれでも特訓の中で最高の笑顔なんだよね。
これ、待受にしよーっと。

あれ〜?せんせいも欲しいの?
あははっ、どうしよっかな〜。
じゃあせんせいも慧の笑顔の写メ、撮ってきてよ。

え、無理?なんで〜?

せんせい、気づいてないの?
なら、教えてあげるよ〜。


慧はせんせいの前でだけ
一番いい笑顔なんだよ。




(幸せで自然と零れるから)



fin

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