「好きだよ、月子ちゃん」



今まで本気で他人を好きになったことがなかった。でも僕は恋をした。
君、に。


「この恋は誰にも言えないんだよ」


どうしてかって?
一方的な気持ちを伝えるだけなら自己満足だ。月子に困る顔をさせてまでは言いたくない。
琥太にぃたちに言ったって仕方ない。正直…照れくさいし。
そして何より僕は月子ちゃんを傷付けるのが目に見えているからだ。本気で人を愛したことのない僕があんなに純粋な女の子とは一緒にいてはいけないんだ。


好きな人が自分を好いている可能性なんて、果てしなくゼロに近い。この世界には星の数ほどの人がいるんだから。
だから僕はこの恋を諦めている。このまま現状維持でもいい。情けないくらい臆病な自分に嫌気がさす。




「水嶋先生、好きです、」


告白?これって告白?
僕が?月子ちゃんに?
告白されているの?
夢のようだ、でも確かに月子ちゃんは僕の目の前にいて頬を赤らめている。


「それ、」
「はっ、はい」
「僕の台詞なんだけど」


最初から言うつもりもなかったのについ強がった。心の中では平然としていられない衝動に駆られていた。嬉しい、嬉しい、月子ちゃんが僕を好きでいてくれていたなんて。
僕の強がりに、本当ですか?と笑う月子ちゃんは今まで見たどの女性よりも…素敵だった。
こんな臆病な僕に比べて、君って人は。



(君には、一生敵わないな)
臆病な僕と少し豪胆な君



fin

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