※朝凪のぬ仔んとこのチャットネタ
※自己愛の最低ざやと、ふりまわされる歪みかど君。
※「へぇ、こんなとこがいいんだ」と言わせたかった。多分あってる。
※精神的オナ話。
※微エロ? ぬるいけど一応R18







「おじゃましまーす」
 彼はそうすることがさも当然であるかのように、するりと僕の部屋に入ってきた。あまりにも、至極当然のことのような行動の滑らかさだったものだから、彼の言葉に思わずどうぞと反射的に答えてしまう。答えてから、ってそうじゃないだろ僕と叫んでしまって、そんな僕を見て彼が笑うものだから恥ずかしくて。
「って、僕鍵かけてたはずなんですけど?!」
 顔が熱いのを感じながら、それでもいつの間にかお湯を沸かし始めた彼に声をかける。彼は鼻歌を歌いながら企業秘密だよ、なんて答えたけど、いくら顔見知りだからといってこれは立派な犯罪だ。いや、彼は情報屋だしそんなこと微塵も気にしないのかもしれないけど。
「あ、合鍵ですか、ピッキングですか……」
「あは、そこ聞いちゃうんだ? 俺は情報屋だからね、ピッキングもできないことは無いけど合鍵のほうがスマートだよねぇ」
 飄々とした彼の態度になんだか脱力してしまって、出てきた言葉に彼はクスクスとまた笑う。どうでもいいけど、合鍵を悪用しないで欲しいなぁと僕は思ったので一応彼に合鍵を渡すよう催促してみる。合鍵だって、立派な情報だから拒否されるか料金を取られるかするかと思ったけど、予想に反して彼はすんなりと合鍵を渡してくれた。
「まぁ、鍵のデータは既に俺のパソコンの中だしね」
 どうやら僕は近いうちに鍵を買い換えなければならないらしい。
 そうこうしてるうちにお湯が沸き、彼は湯飲みを二つ用意してお茶を淹れ始めた。まるで自宅で淹れているかのような滑らかで自然な動きだったが、ここは僕の住んでるボロアパートの一室だ。いくら彼が眉目秀麗だからといっても、着ているのがブランド物でも、こればっかりは誤魔化せない。
「お得意様からいいお茶葉を貰ってね。でも、俺はコーヒー派だから可愛い後輩に譲ってやろうと思ってさ」
「はぁ……」
 紅茶ならまだしも俺、日本茶はあんまり飲まないんだよねぇという彼の言葉に反して、彼はきっちり一度湯飲みにお湯を入れてそのお湯でお茶を淹れていたし、時間もきっちり計っていた。湯飲みから立ち昇る上品なお茶の香りはこの数分で磨耗した僕の心を存分に癒してくれた。
 ずっ、と一口啜ると日本茶特有の渋みと、恐らく手順を踏んで淹れたからであろう、普段はあまり感じない甘みと豊かな香りが広がる。自然と頬が緩むのを感じながら僕は彼にお礼を言った。
「そういえば、今日はこのために来たんですか」
 すると、彼はきょとりと僕のほうを見たかと思えば、にぃっと笑った。泣きそうな、迷子のような笑みだった。彼らしくない。
「そう、だね」
 飄々としてつかみどころの無い彼だけど、今日はよりいっそう分からなかった。表情は迷子のようなのに声は平坦で、でも瞳だけは期待に輝いている。期待、彼は何に期待してるのだろう。僕が僕の思考をコントロールできたのはここまでだった。
 物思いにふけってる間に、彼は僕の顔面ぎりぎりまで近づいて唇を掠めた。ふに、と乾いたやわらかい感触が妙にリアルで、でも思考が追いついてはくれない。そのままぐちゅりという音が直接耳に伝わる。耳をなめられていると認識するよりも早く、僕の身体は快感を拾い裏返った声が喉を掠めていく。押し返そうとしても、身体に力が入らない。今日はこんなに暑かったっけ。畳に押し付けられた体が痛い。とても、良い匂いがする。首に、頬に触る髪の感触がくすぐったくてキモチイイ。遠くで誰かの声がする。媚の混じった、上ずった声。それからクスクスと笑う彼の声。暑い暑い暑い。
 熱に浮かされた冷たい彼の視線が僕の芯を捕らえる。
「こうするため、かな」
 酷く軽薄な笑みに、一瞬だけ僕の思考回路が帰ってきた。どうやら僕は薬を盛られたらしい。
 全身を蹂躙されて強制的で暴力的な快感に咽び泣いた。中心部に酷く熱いものがあてがわれたかと思えば、そのまま何か柔らかくて熱いものに包まれる。キツクて熱くてぐにぐにと僕に絡みつくそれに、恐怖と快感。揺れる視界に、泣きそうな顔で快感を拾う彼の姿。僕と彼の視線が絡む。
 そっと彼の手が僕の頬に触れて、彼が熱っぽい息を吐く。
「君はいま……知り合いの男の排泄器官に強制的に突っ込まされてるわけだけど……っ随分キモチよさそうだね」
 先ほどまでの動きを止めて、彼はゆるゆると腰を揺らす。酷く現実味の無い光景だった。暴力的な快感を与えられ続け、開放寸前の僕の身体には物足りなさ過ぎる刺激がもどかしい。
「ン、ふ……あ……」
 僕のが入ってるそこに、さらに彼の綺麗な指が埋まる。はぁっと吐かれた息を皮切りに僕は彼を求めた。知識も経験も無いから、本能だけに従って彼を突き上げる。迎えた絶頂に、彼が嬉しそうに呟いた一言に、僕は泣きたくなった。
「薬をつかったとはいえ、嫌悪感が勝るんじゃないかとちょっと心配したんだけどね。ふぅん、こんなとこが、イイんだ?」
 いまだ繋がったままの場所からくちくちと音がする。熱い息から時々もれる彼の声は、盛られた薬より性質が悪い。耳から流れ込む彼の声はそのまま脳へと進入し脳細胞を溶かしてどろどろにして思考をぐちゃぐちゃにする。自分が何を感じてるのか、思っているのか分からなくなって、その分からないという感情のまま僕は泣いた。恥も外聞も無く泣いた。臨也さんはそんな僕にかまわず唇を貪って、僕自身を貪った。
 暑くて、めちゃくちゃでぐちゃぐちゃな時間は永遠のようであっという間だった。気づいたら、額には冷えピタが貼られていて身体はきれいになってた。あれもある意味、一種の強姦なのだろう。加えて不法侵入だ。訴えたら勝てる。確実に。けれど、泣きそうで必死な彼の姿に僕はなぜか訴えようという気は起きなかった。そもそも、挿れられた訳じゃないしなぁなんてちょっとずれた思考だとは分かってるけど思ってしまう。
 失ったものがあるとすれば、僕の童貞くらいだ。
 ふと、パソコンの前に妙に分厚い封筒が置かれているのに気づいた。案の定臨也さんからだ。開けてみると、手紙とお金が入っていた。お金だけじゃなくてよかったと思ったのは、お金だけ置かれても僕はどうしたらいいかわからないからだ。綺麗な字を眺めればそこには簡単に不法侵入を詫びる旨と、日本茶のお茶葉には何も混入されてないから安心してほしい旨、それからちょっと多めのお金は鍵を取り換えるのに使ってほしいということが書かれていた。それから、鍵を取り替えないならまた不法侵入するとも。
 完璧に選択権は僕にあるのに、ズルいと思った。だって、あの人にあんなことされて、あんな表情を見て、ここで鍵を取り換え今日をなかったことにしたら、あの人はきっと僕の前から姿を消す。結局僕は、封筒を押し入れの奥深くにしまって、鍵はそのままにしておいた。
 それからしばらくして、あの日のように臨也さんはいきなりドアを開けて僕の部屋へと侵入してきた。僕が鍵を換えてなかったのが意外だったらしく彼はきょとんと僕を見た。妙にあどけない顔だった。
「こんばんは臨也さん」
 僕はといえばあの日と違って、明確な意思を持って臨也さんに挨拶した。この前とは違って、彼のほうが間の抜けた顔をして僕がそれを見て表情をほころばせた。
「鍵、換えなかったの? 馬鹿だね、また俺は君を襲うかもしれないよ?」
「換えてほしかったんですか?」
「いいや、帝人君って案外もの好きなんだなぁって思って」
 そんな僕の表情の変化を敏感に察知した彼はすぐにいつもの笑顔を張り付けたけれど、最初に見せた動揺は隠しきれない。
 僕はと言えば、玄関に突っ立ったままの臨也さんを部屋に招き入れ、お茶を沸かしにかかった。あの日臨也さんがくれた上質のお茶葉で淹れるお茶だ。ちゃんと淹れ方も検索してあるし、何回か練習もした。
「薬は盛ってないので安心してください」
「とんだ意趣返しだ」
 お茶をすする音だけが響く小さな四畳半の部屋で、臨也さんはまだ迷子なのだろうか。四畳半の部屋はこんなにも小さいのに、臨也さんはまだ迷子なのだろうか。
「なんで、あんなことしたんですか」
 そう思ったら、口に疑問をのせていた。
 じっ、と、彼の瞳を覗き込んでも昏い昏い昏い。何も見えない。見せようとしてくれない。あんな痴態は見せてくれるのに、何を怖がってるのだろう、恥ずかしがってるのだろう。それを見せてくれさえすれば、不法侵入も強引に体をつなげることも、それこそ、彼が望むのなら今度はこっちが強姦に臨んでやってもいい。鍵なら開いてるのに。
 無表情な臨也さんはふっと遠い目をして一言つぶやいた。それは、人間ならだれもが一度は望み、求め、生きること。
 愛されたい、と。
 
 臨也さん、臨也さん、それは誰にですか。
 僕にですか、あなたの天敵にですか、あなたのご友人にですか、あなたの愛する人類にですか、神にですか。

「帝人君は、俺のこと愛してくれますか」
「貴方を愛したら、とたんに僕に興味をなくすでしょう。あなたの自慰につき合いたくはありません」

 そういうと、うっそりとほほ笑む臨也さんにダウト。
 あなたは、報われない恋を演じ悲劇に浸っていたいだけでしょう。そうして自分を愛したいだけでしょう。

「だって、そうして手に入れた愛も帝人君の自己愛の延長じゃないか」

 そういった臨也さんの言葉を否定しない僕も、ダウト。

+++++
一年くらいかかったよ!
もう覚えてないだろうけど、ぬ仔とのチャットで話してた精神的オナニー話のはずがどうしてこうなった。
とりあえず、えr書いたからいいよね。

モドル

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