「すまない、アルフレッド」

「なあに、気にすることはないさ、烏。私はこうして君と話しているときが一番楽しいのだからね」

アルフレッド=ヴォン=レグルスタはそういってくしゃりと顔を歪ませた。烏はこのくしゃくしゃになってしまった用紙のような笑いをする老人の笑い方がとても好きだった。

「しかし、雑談をするためだけに俺を呼んだのか?」

「ま、そんなところだね。君はとても人気者だから仕事と称してでもしないと来てくれないだろう」

アルフレッドはクツクツと笑いながらテーブルに置いてある紅茶に手をつけた。

「そんなことは」

無いとは言い切れなかった烏はそこで口を閉ざす。口を閉ざす代わりに烏は窓へと目線を移す。

「……まあ、いいが。それよりも連れてきてよかったのか」

「ん?彼のことかな?それなら大丈夫だよ護衛はちゃんとここにいるし、正直な話をすると、君とこうしてだらだらと話していたいって言うのが今日呼んだ理由だしねえ」

この歳になると暇が多くてね、とアルフレッドは丸みを帯びた銀縁の眼鏡をつける。おや、といった様子でアルフレッドは烏が見ていた窓に近づく。

「どうした」

アルフレッドの目線の先には若緑色の髪色をした少年が外で草むしりをしている最中だった。迷い込んだ猫に気をとられながらウィルは草をむしっていた。

「ふふふ、こうしていると君に子供、いや…歳の離れた兄弟ができたみたいだなとね。さしずめ僕は孫の出来たおじいさんといったところかな」

孫を見るような視線でアルフレッドは少年を見ていた。優しげな、それこそ本当の家族を見るかのような。

「よしてくれ、アンタが爺さんなんて恐ろしい」

烏は珍しく口角を上げてアルフレッドの軽口に付き合う。アルフレッドは満足そうに烏を見る。

「昔の話はなしだよ烏。僕はもう表舞台からは遠ざかって久しいんだから。……さて烏、そろそろあそこの子を僕に紹介してはくれないかな?」



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