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  04


最初に、ともかく爆弾を止めようと駆けだしたマリオが背後から飛来した砲弾に弾き飛ばされた。
飛ばされたマリオに気を取られた瞬間、姫君二人が突如現れた檻に閉じ込められる。二つの檻を掲げ持つのは巨大な赤い食人花――ボスパックンだ。
騒ぎの最中に緑のローブは飛空艇の後を追うように消えていたが、それを残されたカービィが認識するには、事態が余りにも急展開過ぎた。


「どうなってるってんだっ!」


苛立ち紛れにファルコがコンソールを叩く。返ってくるのはエラー音ばかりだ。
既にファルコンは復旧に見切りを付け、今回のステージの正確な位置を割り出すことだけに焦点を当てていた。今すぐ屋敷を飛び出したい衝動を抑え込んで、子リンは解析結果を待つ。

状況は最悪に近い。ボスパックンの持つ檻は、おそらくはクッパがピーチ姫を攫うときに使っているもの、高い魔力を持つ彼女を封じ込める為のものだ。当然、ゼルダも魔力を封じられては檻から逃れることは出来ない。
ボスパックン程度にカービィが後れを取るとは思わないが、姫君たちが捕らわれている以上問答無用で張り倒す訳にもいかない。時間はかかるだろう。
そして時間が経てば経つほど事態は悪化する可能性が高かった。


沈痛な面持ちの子リンを盗み見て、マルスはふと、彼の過去であるリンクのことを思い出す。
彼は今日屋敷に残っている筈だ。少しばかり体調が悪いと言っていたが、その程度でゼルダの危機に彼が駆けつけないなんてことがあるだろうか――?

子リンに問おうとしたマルスの疑問は、突如齎された『答』によって、喉奥へ仕舞われることになる。




「彼らは、世界を亜空に飲み込ませようとしているの」



ふわりと響いた声は、優しいけれど聞き慣れないものだった。
反射的に剣を抜き振り返ったマルスは、ファルシオンの切っ先を扉の方へと向けた。開けっ放しの扉から部屋を覗き込んでいるのは声の印象に違わぬ少女で、向けられた剣に怯える風もなく、微かに苦笑さえ浮かべている。


「ごめんなさい。玄関で何度か声を掛けたのだけれど、誰も応えてくれないものだから。此処は創造神と破壊神のお屋敷で合っているのよね?」
「だとしたら?」


例え少女の姿をしていても、イコール害が無いとは限らない。警戒の色の強いマルスの返答に、少女は苦笑を笑みに変えることで応えた。


「創造神が誘いし戦士たちへ、彼らの意志を伝えに。私はカヌレ。異界にて魔道を極め、真理へ辿り着きし者の写し身」


カヌレと名乗った少女は、優雅に礼をして言葉を続ける。


「そして異変の理由を知る者。…どうぞお見知りおきを?スマッシュブラザーズの皆様」








「異変の理由を知っている…?」


いち早く硬直から立ち直ったファルコンが、訝しげにカヌレに問う。不審を露わにした声にも彼女は気にするでもなく、一つ頷いてみせる。


「私は、此度の異変を食い止めるため、破壊神が招いた勇士のうちのひとりですもの」
「破壊神?クレイジーハンドが呼んだ、と?」
「ええ。…創造神は今、世界へ干渉出来ぬ身の上なれば」


カヌレの言葉に全員が目を見開いた。創造神――マスターハンドが世界に干渉出来ないなど、本来あり得ないことである。


「どういうことだ!?」
「マスターに、何があったって言うんだ!?」


声を荒げて問いただそうとするファルコやフォックスを手で制し、カヌレはここで初めて笑みを崩す。


「状況は、もちろん説明します。けれどそれよりも、今は彼らの避難を。あの爆弾は、始動してしまったらもう止められないわ」


カヌレの言葉に、今度は誰もが顔色を変えた。管理室からの通信は乱闘場全体へのアナウンスしか無い上に、通信システムは復旧していないカテゴリに属している。爆弾のタイマーは二分を切った。座標の特定は出来ていない。
そしてカービィは、檻を壊そうと四苦八苦しているところだった。







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