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  03


突如現れた黒い人型たちは、ものの数分で蹴散らされた。
マリオは言わずもがな、例え見た目が華奢であろうが可愛いかろうが、姫君たちもカービィも歴戦の強者である。数量の面で圧倒的に劣っていても、文字通り人型でしかない意思持たぬものなどに後れを取る筈もない。
四人の実力は十分理解していたものの、画面の前で見ているしか出来なかった子リンはひとまず安堵の溜息を吐く。


乱闘場に謎の飛空挺が侵入してきた段階で、居間で観戦していたファイターは全員が管理室へと駆けつけていた。
マスターハンドもクレイジーハンドも不在の今、自分たちで動かなければ状況理解すら儘ならない。そして彼らが居ないからこそ事態の収拾は急ぐべきで人手はいくら割いても足りないと、屋敷の全てが理解していたから。
然れど、飛びこんだ――事態を把握していると踏んだ管理室では、フォックスがひとりエラーを出し続けるシステムと格闘していて。

文明の違い、その一言で片付けられてきたスキルの差が、よりにもよって今この時に牙を剥いてしまった。

システムの回復を試みるフォックスの援護にファルコとファルコンの手が加わって尚、管理室には赤いランプと警告音が響き続けている。
機材を操る三人はもちろん、機械に疎い子リンやマルスであっても状況が芳しくないことは一目瞭然で、けれどもシステムを動かす技術も知識も持たない彼らには出来ることなどとうに無かった。
否、高度な機械文明を誇る世界の出身である者たちでも一度壊されたシステムを復元するには至らない。マスターハンドの作り上げたシステムはあまりに高度であったのだ。
飛び去った飛空挺に歯噛みするマリオたち。その眼前に現れたのは緑のローブ。急転する状況の中、屋敷の者たちはもはや見守るだけしか出来ることは無かった。

画面の向こうで、相対した緑が口を開く。



「ハじめまシて、スまッシュブラざーズのミナさン」



たどたどしい発音。感情の一切が抜け落ちた声音。思わず身構えたマリオが姫君たちを庇うように立ち、その後ろに控えながらもゼルダはきっ、と相手を見据えた。
『姫』と称されるとも、彼女は真実一国の女王である。況して祖国は『元の世界』で戦乱を受け滅び、映されたこの世界の国を彼女が興してきたのだ。明らかな敵を前に気遅れなどしよう筈もない。


「何者です」


毅然とした、拒否を許さぬゼルダの問いに、ローブの人物――声からは男か女かさえ、判別がつかない――は淡々と答える。


「エイんしゃント卿、ト」
「何故この場を襲いました。何が目的です」
「我ガあるジは、世界をツクりかエる、ト、おっしゃイまシタ」


言葉と共に、エインシャント卿が抱えていた砲丸がフィールドへ落とされた。次いで現れた二体のロボットが、砲丸へ腕を差し込み左右へ割り開く。
内側から現れたのは、刻一刻と数字を減らし続けるタイマー。

爆弾、と管理室の誰かが叫んだ。息を呑んだマリオたちの上には温度の無い声が余りにも軽薄に降り注ぐ。



「デすかラ、『今ノ』世界にハ、亜空ヘかエッていたダキまス」







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